パックご飯が好調=手軽さ人気、非常用から日常食に 2022年06月02日

 パックご飯の販売が国内外で好調だ。手軽に炊きたてのような味を楽しめ、支持を広げている。東日本大震災を機に非常食として注目され、コロナ禍による外出自粛で単身・高齢者世帯を中心に日常用としても浸透。企業や政府は好機と捉え、増産や輸出振興に動いている。
 近年、コメの消費量は年約10万トンずつ減少し、コメ離れに歯止めがかからない。一方、パックご飯の生産量は着実に伸び、農林水産省の食品産業動態調査によると、パックご飯を指す「無菌包装米飯」と「レトルト米飯」を合計した2021年の生産量は約23万4000トンで、統計を始めた1999年以来最高だった。
 「炊きたて」を短時間で必要な量だけ食べられる便利さに加え、ブランド米を使用した商品も登場し、おいしくなっていることも消費者に受け入れられている。海外でも精米に比べ手頃な値段で買えるため人気が高まっているという。
 アイリスオーヤマ(仙台市)は、佐賀県鳥栖市の工場に精米・パックご飯の生産設備を順次導入する。宮城県の工場で製造してきたが、「1工場では供給が間に合わない」(大山健太郎会長)ためだ。新ラインの稼働後、アジア諸国への輸出も始める。
 コメ卸最大手の神明ホールディングス(神戸市)は、富山県入善町の子会社でパックご飯を製造。輸出にも力を入れ、20年度の販売は前年度比1割増の1.1億食となった。中国では「日本ブランドは値が張るが、味への評価は高い」(広報)という。厳しい検疫がなく輸出しやすいことから、増産を模索する。
 パックご飯の好調はコメの消費減退に悩む関係者にとっては朗報だ。ただ、農水省は「国内需要が高く、(輸出の)余力がない状況」とみており、企業による生産体制増強や海外向けPRに補助金を出して支援している。 

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