防衛費増へ調整着手=公明理解、規模焦点に―政府・与党 2022年05月25日

 岸田文雄首相が先の日米首脳会談で防衛費の「相当な増額」を表明したことを受け、政府・与党は25日、防衛予算をめぐる調整に着手した。公明党は同日、増額に理解を示す提言を政府に提出。ただ、際限のない拡大には反対で、2023年度予算でどの程度の規模とするかが当面の焦点となる。
 首相は25日の衆院本会議で防衛費の計上に関し、「まず行うべきは国民の命や暮らしを守るために何が必要か積み上げることだ」と説明。防衛力を抜本的に強化する方針に触れ、「予算をしっかり確保する」と語った。
 6月に予定される経済財政運営の指針「骨太の方針」の閣議決定や8月の概算要求に向けて調整が本格化する。
 首相が23日の会談でバイデン大統領に防衛費増を約束したのは、中国、ロシア、北朝鮮の動きを踏まえ、日本の安全保障環境はかつてなく厳しいと判断したからだ。周辺によると、増額賛成論が過半数を占める世論調査結果が相次いだことが後押しとなった。
 自民党は勢いづく。同党は先月の提言で、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求める国内総生産(GDP)比2%の国防費を目安として「5年以内に必要な予算水準の達成を目指す」よう提唱した。
 防衛省の当初予算に限ると、日本の現行水準はおおむねGDP比1%弱。22年度は5兆4005億円だ。安倍晋三元首相は23日の会合で、5年間でNATO並みに増やすことを念頭に、23年度の防衛費は「6兆円台後半」とするのが適当だとの見方を示した。
 公明党も増額自体は受け入れざるを得ないとの姿勢だ。竹内譲政調会長は25日、防衛費増額について「国民全体の共通認識に近い。もう不可避だ」と記者団に表明。幹部は「共産党みたいな反対論は参院選に向け得策でない」と語った。
 ただ、「平和の党」の立場から「歯止めは必要」(党重鎮)としており、予算額や装備の内容を厳しくチェックする考え。25日に出した提言でも「真に必要な予算措置」に限るようくぎを刺した。自公間で綱引きが激化する見通しだ。
 財源確保も課題だ。財務相の諮問機関である財政制度等審議会は25日の意見書で、財源について「奇策や近道があるわけではない」と指摘。「NATOには国防費増額と併せて歳入も議論している国がある点を見落としてはならない」と記した。 

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衆院本会議で答弁する岸田文雄首相(中央)=25日午後、国会内
衆院本会議で答弁する岸田文雄首相(中央)=25日午後、国会内

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