最高益も晴れぬ視界=原材料高が打撃、2割減益へ―トヨタ 2022年05月12日

 トヨタ自動車の2022年3月期連結決算は、円安効果や新車の販売回復で収益が膨らみ、売り上げと利益はいずれも過去最高となった。だが、好業績を手放しで喜ぶ雰囲気は見られない。原材料価格の一段の高騰を見込み、23年3月期は2割の減益予想。半導体不足で自動車各社が減産を強いられる中でも底力を示したトヨタだが、暗中模索のかじ取りは続きそうだ。
 22年3月期の営業利益は前期比36.3%増の2兆9956億円。期初予想は2兆5000億円だったが、1ドル=105円と想定していた為替レートが112円で着地したほか、販売台数が順調に伸びたことが寄与して大きく上振れた。
 08年のリーマン・ショック後に積み重ねた原価低減などの努力も効いたといい、近健太副社長は「(円安や販売増だけでなく)これまで築いた体質改善が表れるものだ」と強調した。
 ただ、今期も不安材料が目白押し。特に懸念されるのが原材料費などの高騰だ。前期は6400億円の営業減益要因となったが、今期は1兆4500億円と「過去に例がないレベル」(近副社長)に膨らむ見込み。想定為替レートを115円と堅く見積もったため、現状の130円程度の水準が続けば上振れる公算が大きいが、為替動向は見通せない。
 また、取引先の中には円安で原材料の輸入価格が一段と高騰し、採算悪化に苦しむ業者も少なくない。トヨタグループの有力企業からも「円安はネガティブだ」(愛知製鋼の藤岡高広社長)と悲鳴が上がるほど。トヨタは仕入れ価格などで配慮する方針だが、負担は増えそうだ。
 計画通りに車を生産できるかどうかも焦点となる。今期はトヨタ・レクサス両ブランドで13.2%増の970万台と強気の生産計画を立てたが、前期は半導体不足などで頻繁に減産を強いられた。半導体不足は今年いっぱい続くとの見方が多い上、5月には中国・上海のロックダウン(都市封鎖)の影響で一部工場の稼働を止める予定。操業はなかなか安定しそうにない。
 子会社の日野自動車の燃費・排ガスデータ不正問題も足を引っ張りそうだ。一部車種を出荷できない状態が続いており、トヨタの業績下振れにつながるリスクがある。 

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