農畜産業で資材高騰=ウクライナ情勢波及―生産者に負担 2022年04月18日

 深刻化するウクライナ情勢を背景に、穀物や肥料など農業や畜産業に必要な生産資材の価格高騰が続いている。特に穀物はロシアとウクライナ両国からの輸出減少で価格が大きく上昇。穀物を原材料に含む配合飼料も値上がりし、生産者の負担がかさむ。ただ、販売価格への転嫁は難しく、経営の先行きが見通しにくい状況だ。
 「(生産資材の)高騰にもかかわらず、価格に転嫁できない」。全国農業協同組合中央会(JA全中)の中家徹会長は7日の定例記者会見で、生産調整がしにくい野菜など生鮮食品の販売価格は需給動向で決まることが多いと指摘。資材価格の高騰が農家の所得減少に直結すると強調した。
 穀物価格は、干ばつによる不作などが原因で高止まり。さらに、ロシアがウクライナに侵攻したことで供給不安に陥り、小麦の先物価格はシカゴ市場で14年ぶりに最高値を更新、穀物相場の影響を受ける飼料価格も急上昇した。政府は価格安定制度の基金を積み増したが、「この先枯渇しかねない」(自民党議員)と懸念する声がある。
 肥料も原料価格高騰の影響を受けている。農産物の生育に必要な肥料の原料の一つ、リンは約9割を中国に依存するが、同国の輸出規制を受けて価格が急上昇。カリウムも全体の4分の1をロシアとベラルーシから輸入しており、調達先の変更は必至だ。
 全国農業協同組合連合会(全農)は、リンの調達先をモロッコに切り替えるなど、対応に追われる。全農はこの先も肥料原料の国際価格が高値で推移するとみており、今年秋に使用する肥料の価格改定でも値上がりを見込む。
 施設園芸の被覆素材や暖房用として使われる原油の価格高騰や、円安による輸入物価押し上げも重なり、生産者は「三重苦だ」と嘆く。政府は4月末までに取りまとめる「総合緊急対策」で、食料の安定供給に向けた支援策を盛り込む予定。ただ、「価格高騰の要因となったウクライナ情勢は見通せず、財源がない中で十分な支援ができるのか」(別の自民党議員)との指摘が出ている。 

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肥料の過リン酸石灰などをまいた農地=16日、福島県塙町
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