代替に時間、家計負担増も=ロシア産石炭、日本も全廃方針 2022年04月08日

 政府はロシアへの追加経済制裁で先進7カ国(G7)と協調し、石炭輸入量の1割程度を依存するロシアからの輸入を段階的に削減し、全廃を目指す方針を打ち出した。「代替(調達先の)確保に国として責任を持つ」(萩生田光一経済産業相)と強調しているが、代替には時間がかかる見込み。調達コストの増加による電気代の上昇を通じて家計の負担増加につながる可能性もあり、全廃には難路が待っている。
 日本は国内で利用する石炭のほぼ全量を輸入している。ロシア産は、主に火力発電燃料として利用される「一般炭」の13%、主に製鉄所で使う「原料炭」の8%を占める。
 脱炭素社会の実現へ石炭火力発電からの脱却が求められる中、世界の石炭生産の約6割を占める一般炭への風当たりは特に強い。日本の大手商社も相次いで一般炭事業の権益を手放しており、「投資額は減少傾向にある」(大手商社幹部)のが実情だ。こうした状況を反映し、「石炭需給は世界的に逼迫(ひっぱく)しており、価格も高止まりが続いている」(経産省幹部)という。
 ただ、日本国内では、石炭火力発電が電力供給力の調整に優れた安価な電源として今も活用されている。電力各社の石炭火力発電燃料に占めるロシア産の比率は、電源開発(Jパワー)が8%(2021年度)、中国電力が9%(21年4~12月期)、東京電力グループと中部電力の火力発電事業を統合したJERAでは1割強(20年度)と、依存度は小さくない。
 ロシア産の輸入を削減するには「オーストラリアかインドネシアから代替調達するしかない」(大手商社)とみられるが、両地域とも豪雨などの影響で生産量は落ち込んでいるという。
 ロシア産が市場から締め出されれば、「これまで以上に需給が逼迫して代替調達コストも跳ね上がる」(電力大手)とみられる。燃料代が上昇すれば、電気代の上昇圧力も一段と強まりそうだ。 

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