東芝再建、振り出しに=「非公開化」にも難問 2022年04月08日

 経営再建策をめぐって「物言う株主」と対立を続ける東芝が7日、株式の「非公開化」を検討すると表明した。上場企業のブランド維持にこだわって再建案を模索してきたが、大株主の要求に押され、振り出しに戻った。ただ、既存株主から東芝株を買い集める非公開化には、スポンサー探しや外為法などの難問が待ち受けている。名門企業の迷走は、なお続きそうだ。
 米原発事業の巨額損失などで債務超過に陥り、東証1部から2部に転落した東芝は2017年12月、物言う株主らに出資を仰いだ。虎の子の半導体事業を売却するなどして息を吹き返し、21年1月に東証1部復帰を果たした。
 その後、英投資ファンドCVCキャピタル・パートナーズが非公開化を前提とする買収を提案したが、社内の反発などで頓挫。物言う株主とのあつれきが一段と強まる中、東芝はグループを分割する計画を打ち出したが先月の臨時株主総会で否決され、中断に追い込まれた。東芝は特別委員会を新設し、投資家らと非公開化の協議に入ると発表した。
 海外ファンドなどが株式を買い取って東芝を非公開化すれば、物言う株主は高値で売り抜けられる。東芝も株主の要求に神経をすり減らす必要がなくなるが、ハードルは高い。
 外為法は、原発や防衛など安全保障に関わる上場企業への外国人投資家による出資を厳しく規制している。先月、米投資ファンドのベインキャピタルが東芝買収を検討していることが判明。これについて、早稲田大大学院の長内厚教授は「外資ファンド主導では国策上認められるのかという議論が起こる。経済産業省も黙っていない」と指摘する。
 巨額の買収資金もネックとなる。昨年4月、CVCが東芝に買収を提案した際、大株主の3Dインベストメント・パートナーズは「1株6500円超」が適正価格だと主張した。市場に流通する全株式の取得には3兆円近い資金が必要になる計算だ。
 上場維持に対する東芝のこだわりも根強い。ある関係者は「(分割案を)取り下げたわけではなく中断だ。何も決めないことを決めたということだ」と打ち明ける。今後の協議次第では、分割案を練り直して再提案する可能性も残る。 

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東芝のロゴマーク=2021年4月、東京都港区
東芝のロゴマーク=2021年4月、東京都港区

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