進む規制緩和、ルール複雑=違反、事故対策を懸念―電動キックスケーター・警視庁 2022年03月05日

 電動キックスケーターの規制緩和などを盛り込んだ道交法改正案が閣議決定された。都市部の若者を中心に利用は広がるが、警視庁関係者は違反や事故への対策を懸念。普及と交通安全の両立を目指す中でルールは複雑化しており、新たな移動手段の浸透には課題も残る。
 現在は原付きバイクに分類される電動スケーターについて、改正案は最高時速20キロ以下の車両を新たな区分とし、16歳以上なら免許不要、ヘルメットなしの走行を可能とした。原則、車道走行だが、最高時速が6キロ以下に制御される場合は歩道通行も認めるなど車両によってルールが異なり、同庁関係者は「複雑になる」と指摘する。
 2月17日夜、東京・原宿の明治通り。電動スケーターをレンタルした都内の男子大学生(19)は「3日前に終電を逃し初めて自宅近くまで乗った。(運転は)楽しい」と笑顔を見せ、友人と共に渋谷方面に走り去った。
 「これ、イリーガル(違法)っすよ」。表参道の交差点近くでは、車両を路肩に止めたダンサーの男性(29)=品川区=があっけらかんと話した。ヘルメットの代わりに頭にかぶるのは、パーカーのフードとキャップ。昨年12月、インターネットで約2万円で買ったという車両には、設置義務があるミラーやナンバープレートは見当たらない。警察に1月、違反車両だと指導されたが乗り続けている。「便利。畳めば電車にも持ち込める」。保険も無加入といい、「事故ったら不利っすね」と語った。
 国は昨年4月以降、11都府県でヘルメットなしの乗車を認める実証実験を始め、同10月までに8万人超が利用。さらなる普及が見込まれ、日本電動モビリティ推進協会の鳴海禎造理事長は「乗り物の選択肢が増え、利便性向上につながる」と期待を寄せる。
 一方で警察当局は、安全対策を懸念する。警視庁は事故などが目立ち始めたとして、2020年6月に集計を開始。昨年、都内で確認された歩道通行などの違反は207件、事故は68件に上り、捜査関係者は「急な利用拡大で交通ルール周知が追い付いていない」と嘆く。施行は成立して公布後、2年以内。時間が限られる中、警視庁関係者は「新たなルールを定着させていく」と意気込んでいる。 

その他の写真

街中を走る電動キックスケーター=2月2日、東京都渋谷区
街中を走る電動キックスケーター=2月2日、東京都渋谷区

特集、解説記事