外環道工事、一部差し止め=陥没再発の恐れ認める―周辺住民申し立て・東京地裁 2022年02月28日

 東京外郭環状道路(外環道)の大深度地下トンネル工事をめぐり、都内の周辺住民13人が差し止めを求めた仮処分申請で、東京地裁(目代真理裁判長)は28日、国や東日本高速道路(NEXCO東日本)などに大型掘削機を使ったシールド工法による工事の一部差し止めを命じる決定を出した。
 地裁が差し止めたのは、東京都世田谷区から武蔵野市までの約9キロにわたるトンネル2本の掘削工事。外環道は大規模な国家プロジェクトで、差し止めが命じられるのは異例だ。決定は事業に大きな影響を与えそうだ。
 外環道をめぐっては2020年、地下トンネル工事区間の真上にある調布市の住宅街で陥没事故が発生。東日本高速道路は、シールド工法によるトンネル掘削が陥没要因の可能性が高いとし、工事を中断した。ただ、情報公開強化などの再発防止策を提示し、今年2月に練馬区内で工事を再開していた。
 決定で目代裁判長は、一部住民の居住地が陥没箇所から30メートル程度の距離だとして「シールド工法で工事が再開されれば、陥没などが生じる恐れがある」と指摘。具体的な再発防止策も示されず、住民の生命や身体の危険が生じる恐れがあるとして「差し止めは相当とする違法性が認められる」とし、世田谷区内地下から北に向けて掘り進む工事の中止を命じた。
 一方、練馬区側から南に進められる掘削工事は、申し立てた住民の権利が侵害される具体的な恐れの証明がないとして、差し止めの対象とはしなかった。東日本高速道路が2月に再開した工事は同区で行われている。
 大深度地下は地表から深さ40メートル以上の空間で、公益事業と認められれば、地上の土地所有者の同意を得ずに事業を進めることができる。外環道以外では、リニア中央新幹線の建設工事も適用対象となっている。
 斉藤鉄夫国土交通相は「関係機関と調整の上、適切に対応していく」とするコメントを出した。東日本高速道路は「決定内容を確認中だ」としている。 

その他の写真

東京地裁が外環道の一部工事差し止めを命じる仮処分決定を出したことを受け、記者会見する申立人の住民ら=28日午後、東京都千代田区
東京地裁が外環道の一部工事差し止めを命じる仮処分決定を出したことを受け、記者会見する申立人の住民ら=28日午後、東京都千代田区
陥没した住宅街の市道=2020年10月18日、東京都調布市(東日本高速道路提供)
陥没した住宅街の市道=2020年10月18日、東京都調布市(東日本高速道路提供)

特集、解説記事