企業物価、36年ぶり高水準=下請け悲鳴、3割「転嫁できず」 2022年02月10日

 日銀が10日発表した1月の国内企業物価指数(速報値、2015年平均=100)は109.5と、1985年9月(110.0)以来、36年4カ月ぶりの高さとなった。同指数は、企業間で取引されるモノの価格を示し、企業は販売価格などに転嫁できなければ経営が圧迫される。民間調査では、下請け中心に3社に1社から「価格転嫁は全くできていない」との悲鳴が上がっている。
 食料品やガソリンなど消費者への販売価格に転嫁する動きが出ており、日銀は企業間でも「少しずつ様子を見ながら、これまでのコスト上昇分を転嫁する動きが広がっている」と分析した。
 だが、帝国データバンクが1月後半に実施した価格転嫁の実態調査(1万1981社回答)では、約8割の企業が自社の商品やサービスに原材料価格高騰などの影響があると回答し、さらに36.3%は「価格転嫁が全くできていない」と答えた。
 調査では「価格転嫁は下請けの立場からは不可能」(機械工具卸売り)のほか、「転嫁できるのは仕入れ値だけで、人件費や運送コストなど自社の経費を上乗せできる環境にない」(鉄鋼卸売り)など下請け企業を中心に苦境を訴える声が相次いだ。
 岸田文雄首相は9日、食料品やガソリンの値上がりが進んでいることに関し、「モノの値上がりに対し、賃金の引き上げが行われなければならない」と指摘した。だが、下請け企業を含めて製品やサービスの供給網全体でコストの適正な分担が進まなければ、賃上げの広がりは難しそうだ。
 政府は10日、中小企業の価格転嫁に向けた会議を開催。萩生田光一経済産業相は下請けからの価格転嫁が不十分な企業に対し、業界を所管する閣僚名で個別に注意喚起するなどの対策を示した。 

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