政府、特許非公開で新組織=流出防止技術、2段階で審査 2022年01月15日

 政府が経済安全保障の強化に向けて導入を準備している特許非公開制度で、公開を制限すべき機微な技術かどうかを審査する安全保障担当部門を新設する検討に入ったことが15日、分かった。安保に関わる機密情報の流出防止が目的で、特許庁が1次審査を行い、新設組織による2次審査で「機微性」を判断する。17日召集の通常国会に提出する経済安全保障推進法案と関連政省令で整備を目指す。
 米国と中国が経済や科学技術での覇権争いを激化させる中、日本も通信の秘匿性を高める量子暗号など先端技術の海外流出を防ぐ仕組みが求められている。日本の特許制度では出願から1年半後に原則的に内容が閲覧可能となっているが、政府が重要な機微技術と判断した場合に公開を制限できるようにする。
 2次審査の担当部門は内閣府と防衛省を中心に構成し、非公開指定後の情報管理などにも当たらせる方向。審査期間は出願から合計10カ月以内とする案が浮上している。
 非公開の対象は当面、量子暗号や原子力など軍事転用の可能性が高い技術に限定し、研究開発の意欲をそがないようにする。非公開対象とした技術は、海外での特許出願も制限する。非公開にすると開発者は特許収入を得られなくなるため、国が一定の基準で補償する枠組みも設ける。
 岸田政権は経済安保の強化を重要政策に掲げており、経済安保推進法案の早期成立を目指す。法案は特許非公開制度創設のほか、半導体など重要物資の供給網強化、基幹インフラ機能の維持などが柱となる。
 米欧や中国は、安保上重要な技術を非公開にする「秘密特許制度」などを設け、情報漏えいに罰則も定めている。政府によると、先進7カ国(G7)で非公開制度がないのは日本のみという。 

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