成人年齢引き下げ、若者標的か=マルチでトラブル「規制強化を」―専門家 2022年01月08日

 暗号資産(仮想通貨)投資などのマルチ商法をめぐり、民法改正に伴う4月の成人年齢引き下げで、トラブルに巻き込まれる若者の増加が懸念されている。専門家は「未成年として守られていた18~19歳が新たな標的になりかねない」と指摘。金融知識や判断力の乏しさに付け込んだ契約は取り消せるようにする法規制が必要と訴えている。
 警視庁は2021年11月、高配当をうたい、約650億円相当の暗号資産を集めたとされる投資グループ「ジュビリー」の男ら7人を金融商品取引法違反(無登録営業)容疑で逮捕した。勧誘動画で主催者は「20代から億万長者」と豪語。若くても大金を稼げると宣伝しており、国民生活センターへの被害相談の約7割は10~20代からだった。
 「週1回『ポチポチ』するだけで稼げる」。20年1月、関西地方の男子大学生(22)は部活の先輩にジュビリーへの出資を誘われた。「ポチポチ」とはスマートフォンの画面をタップする行為。軽快な言葉の響きが、気軽に資産を増やせると錯覚させた。
 「うさんくさすぎやろ」。当初は疑ったが、「月400万稼いだ」と自慢する先輩のインスタグラムには札束や高級レストランの写真が投稿されていた。刺激された大学生は約1カ月後、アルバイトでためた約30万円をジュビリーに投じ、友人も勧誘。ただ、約束された配当はわずか半年で受け取れなくなった。「誘った人に申し訳ない」と後悔をにじませる。
 民法は未成年が保護者の同意なしに結んだ契約は取り消せると規定しており、消費者問題に詳しい平沢慎一弁護士は「返金請求される可能性がある未成年は(マルチなどの)勧誘対象になりにくかった」と指摘する。
 しかし、今年4月には成人年齢が18歳に引き下げられる。20歳前の若者の多くは投資や契約に関する知識が乏しいとみられ、捜査関係者は「標的になる」と懸念。国民生活センターの藤川美夏主事は「(誘われても)怪しいと思ったらきっぱりと断ってほしい」と呼び掛けている。 

特集、解説記事