日本政府、「同志国」との連携拡大狙う=豪との円滑化協定、対英交渉に弾み 2022年01月06日

 岸田文雄首相とオーストラリアのモリソン首相が6日、自衛隊と豪軍の相互訪問の法的基盤となる「円滑化協定(RAA)」に署名した。日本政府はインド太平洋地域で覇権主義的な動きを強める中国を念頭に、欧州やアジアの「同志国」と連携を深めたい考え。豪州との防衛協力強化を先例に各国と協議を進める方針で、英国とのRAA交渉に弾みがつくことに期待が出ている。
 岸田首相は署名式の席上、「現下の安全保障環境において日豪協力の重要性は高まっている。精力的に交渉した成果が結実した」と強調。モリソン首相も「豪軍と自衛隊の相互運用性を高めることは非常に大切だ」と訴えた。
 日豪は2007年の安保共同宣言以降、食料・燃料・弾薬を融通し合う「物品役務相互提供協定(ACSA)」や、機密情報を交換するための「情報保護協定」の締結など幅広い分野で安保協力を具体化。これまで豪州との合意が他国との協力のモデルになってきたと言える。
 日豪RAAは14年に交渉入りした。発効すれば、出入国や武器の持ち込みの手続きが簡略化されるなど、共同訓練をよりスムーズに実施できることになる。米国との間には地位協定があるが、RAAとしては初の署名だ。刑事司法制度の適用をめぐり難航しただけに、外務省幹部は「次につながる」と胸を張る。
 日米同盟を基軸として、豪州やインド、英仏独といった欧州主要国などに連携の輪を広げるのが日本の対中戦略の基本。日英のRAA交渉は昨年10月に始まった。欧州連合(EU)離脱以降、「インド太平洋シフト」を鮮明にする英国に対しては日本側の期待が高く、政府関係者は「同志国のネットワークを強めていきたい」と語る。 

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