北極圏、大国間競争の様相も=19日から閣僚級会合 2021年05月18日

 【ワシントン時事】米国やロシアなど8カ国で構成される北極評議会の閣僚級会合が19、20両日、アイスランドの首都レイキャビクで開催される。地球温暖化で北極圏が「より開かれた海」に変わろうとする中、新航路や資源の確保を目指すロシアは軍事プレゼンスを拡大。「北極近接国家」を自称する中国も進出を強めており、北極圏は大国間競争の舞台と化しつつある。
 同評議会には中国や日本もオブザーバーとして参加する。米政府高官によると、ブリンケン国務長官は閣僚級会合で「北極圏の平和維持」に向けた継続的努力や気候変動対策での連携を訴える見通し。ウクライナ問題やサイバー攻撃をめぐって関係が冷え込んだロシアとも協力を探る方針だ。
 ブリンケン長官は会合の場で、ロシアのラブロフ外相とも初めて直接会談する。6月に予定されるバイデン米大統領とプーチン・ロシア大統領の初会談に向けた調整を行うとみられる。
 北極圏をめぐる情勢は温暖化の進行で大きく変化している。米政府高官は、海氷の急激な減少が経済的恩恵だけでなく、「大きなリスク」ももたらすと予想する。
 ロシアは近年、北極圏に新たな軍事基地を建設して部隊を展開するなど、軍事活動を活発化させている。中国もシルクロード経済圏構想「一帯一路」の一環として、「氷上シルクロード」建設を表明。国産砕氷船の建造を急ぐとともに、北極圏に位置する国に研究施設やインフラ設備投資を持ち掛け、北極圏進出の野心をむき出しにする。
 中国の関心は経済分野だけにとどまらない。3月に採択した5カ年計画では北極圏開発に関与する方針を明示したが、裏には軍事的意図も透けて見える。
 米国防総省は2019年公表の「北極圏戦略」で、中国が将来、北極海に潜水艦を展開することを狙っている可能性があると警告した。ポンペオ前国務長官も同年の北極評議会閣僚級会合で「北極海を新たな南シナ海にしてもよいのか」と危機感をあらわにしている。 

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17日、アイスランドのケプラビーク国際空港に到着し、手を振るブリンケン米国務長官(AFP時事)
17日、アイスランドのケプラビーク国際空港に到着し、手を振るブリンケン米国務長官(AFP時事)
ロシア北部セベロモルスクにある北方艦隊基地の軍艦=13日(AFP時事)
ロシア北部セベロモルスクにある北方艦隊基地の軍艦=13日(AFP時事)

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