シリア内戦10年、終息見えず=死者40万人、難民600万人―国民の半数が避難 2021年03月13日

 【イスタンブール時事】シリアで内戦勃発のきっかけとなった大規模な反政府デモが起きてから15日で10年。少なくとも約40万人が死亡し、国外に逃れた600万人超を含め、全国民の半数に当たる1000万人以上が家を追われた。アサド政権や反体制派、クルド人勢力などの内戦当事者に加え、それぞれを支援する各国の利害関係は複雑化し、交戦終結の見通しは立っていない。
 10年前の大規模デモは、チュニジアやエジプトで独裁政権が打倒され、「アラブの春」と呼ばれた民主化要求運動に触発されたものだった。当初は非暴力的な抗議行動として始まったが、アサド政権が参加者らに激しい弾圧を加えたため、デモから武装闘争へと傾斜していった。
 内戦では今年3月現在、ロシアとイランの支援を受ける政権側が国土の主要部分で支配権を回復。トルコを後ろ盾とする反体制派が北部の国境地帯などで勢力を維持する。過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いで米国の支援を受けたクルド人勢力は、主に北東部を掌握している。
 ISは2014年、内戦による「権力の空白」に乗じてシリアとイラクにまたがる広範な地域を勢力圏に収めて「建国」を宣言。日本人ジャーナリストを含む外国人らを次々と残虐な手法で殺害してその様子をインターネット上で公開、存在を誇示した。ほかの内戦当事者は対ISである程度足並みをそろえて作戦を展開し、17年にはクルド人勢力がISの中心拠点ラッカを制圧した。
 ISが力を失うと、再び各勢力間の抗争が顕在化した。政権側の空爆で反体制派が劣勢に立たされる中、クルド人勢力をテロ組織と見なすトルコは地上作戦で北部の一部地域を支配下に置き、反体制派との共同統治に当たっている。
 国連は内戦収拾に向けた和平交渉の仲介を試みるが、成果は出ていない。19年からはロシアとトルコ、イランの後押しで政治解決を目指す「憲法起草委員会」の会合が行われているものの、軍事面で優位に立つアサド政権側は対話に消極的で、「進展は期待できない」(反体制派幹部)状況だ。 

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シリアで始まったアサド政権に対する抗議デモ=2011年3月、南部ダラア近郊(AFP時事)
シリアで始まったアサド政権に対する抗議デモ=2011年3月、南部ダラア近郊(AFP時事)
通りで声を上げる反アサド政権のシリアのデモ隊=2011年3月、南部ダラア(AFP時事)
通りで声を上げる反アサド政権のシリアのデモ隊=2011年3月、南部ダラア(AFP時事)
町を巡回するシリア兵ら=2011年3月、北西部ラタキア(AFP時事)
町を巡回するシリア兵ら=2011年3月、北西部ラタキア(AFP時事)

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