地銀、無利子融資4兆円=企業経営の支援不可欠 2020年08月20日

 地方銀行が手掛ける実質無利子・無担保の融資が急拡大している。新型コロナウイルスの感染拡大で苦境に陥った中小企業などの資金繰りを支えるため、6月末までの実行額は累計約4兆円に上った。ただ、コロナ禍の長期化で融資先の存続が危ぶまれる事態も懸念され、企業の収益力向上など経営支援策の強化が不可欠となっている。
 時事通信が全国の地銀102行に実質無利子・無担保融資の実行額を聞いたところ、回答した84行で計約3.7兆円(一部自治体独自の制度融資を含む)となったことが分かった。
 実質無利子・無担保融資は、国の補助を受けた自治体が3年間利子を補給し、各地の信用保証協会が、返済が難しくなった元本の全額か大半を肩代わりする仕組み。政府系金融機関が担ってきたが、コロナ禍を受けて5月から地銀など民間金融機関に拡大。ある地銀は「救うことができた企業は確実にある」と意義を強調する。
 しかし、貸し手にとっては「取りっぱぐれがない融資」(金融庁関係者)だけに、過剰な営業活動も散見される。実際、資金調達を終えた隣県の企業に対し、融資枠上限まで借りるよう営業攻勢をかけた地銀もある。別の金融庁関係者は「経営支援まで面倒を見ないのに無責任だ」と批判する。
 実質無利子・無担保とはいえ、企業は新たな借金を抱え、返済に向けた負担は着実に増している。企業が倒産や廃業に至り地域経済が地盤沈下に陥れば、ただでさえ低金利で利ざやを稼げない地銀は、貸し倒れで与信関係費用が膨らみ、経営に打撃を受ける。地銀は、地域を支える企業に寄り添ってビジネスモデルの変革などを支援し、自らの健全性を維持することが求められている。 

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