物言う株主、企業統治重視=中長期の成長促す 2020年06月11日

 3月期決算企業の株主総会が11日のトヨタ自動車から本格化した。今年は新型コロナウイルスの感染拡大で事業環境が激変しており、企業に積極的な提案を行う「物言う株主」は短期的な利益還元ではなく、中長期的な企業価値向上につながるコーポレートガバナンス(企業統治)改善を重視する姿勢を鮮明にしている。
 大和総研によると、物言う株主の提案を受けた3月期決算企業は過去最多の22社に上り、近年の旺盛な活動が続いている。
 目を引くのは、ガバナンスに関する提案だ。米投資ファンド、ファーツリー・パートナーズは、JR九州に対し、成長が見込まれる不動産投資に精通した社外取締役候補を推薦した。前年提案した取締役選任議案は否決されたが、最大4割の支持を得ており、再び注目を集める。一方、前年併せて行った自社株買いの提案は見送っている。
 香港のファンド、オアシス・マネジメントは三菱倉庫に対し、医薬品物流の元経営者を社外取締役として株主提案した。社外取締役候補が三菱グループ出身者で占められる点を問題視し、「独立した視点を経営に生かすべきだ」と主張。取締役会の経営への監視機能強化を求める。
 東レは、子会社の上場を維持する理由を開示するよう国内ファンドから求められている。投資家は、親子上場がグループ全体の企業価値向上につながっているか厳しい目を向けている。
 大和総研の吉川英徳主任コンサルタントは「物言う株主は他の機関投資家に働きかけ、共感を得やすい議案を出して要求を通そうとする傾向が見られる」と指摘する。企業は、投資家の提案にしっかり向き合うことが一段と求められそうだ。 

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