ロシア離れ加速、米にシフト=アゼル・アルメニア和平宣言 2025年08月09日 14時41分

8日、ホワイトハウスで署名文書を掲げる(左から)アゼルバイジャンのアリエフ大統領、トランプ米大統領、アルメニアのパシニャン首相(AFP時事)
8日、ホワイトハウスで署名文書を掲げる(左から)アゼルバイジャンのアリエフ大統領、トランプ米大統領、アルメニアのパシニャン首相(AFP時事)

 係争地ナゴルノカラバフを巡って長年対立してきた旧ソ連構成国のアゼルバイジャンとアルメニアが、トランプ米大統領仲介の下、和平実現に向けた共同宣言に署名した。両国は最近、ウクライナ侵攻を続けるロシアから距離を置き、プーチン政権が「勢力圏」と見なす南カフカス地方で米国が存在感を示す結果となった。
 米国の関与が際立つのが、アゼルバイジャンの本土と飛び地ナヒチェワン自治共和国をつなぐ回廊の設置だ。回廊が通過するアルメニアの領土・主権や安全保障を害さない形で米国が管理する構想で、「トランプ・ルート」と称される。両国の南側に位置するイランににらみを利かせる狙いもありそうだ。
 30年以上にわたる紛争はアゼルバイジャンが2023年の軍事作戦でアルメニアに勝利し、ナゴルノカラバフを制圧した。自信を深めたアゼルバイジャンが飛び地を地続きにするため、新たな軍事手段を取るのではないかと懸念されていた。
 アルメニアは紛争でウクライナ対応に追われるプーチン政権の支援を受けられず、不満を募らせていた。パシニャン首相は昨年、ロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)からの「脱退」を宣言。今年に入って欧州連合(EU)加盟方針も打ち出し、既に米国との合同軍事演習も行っている。
 一方、昨年末にはアゼルバイジャンの旅客機がロシア軍の誤射とみられる原因で墜落。アリエフ大統領が公然と謝罪を要求して対ロ関係は急速に冷え込み、最近はロシアの侵攻にあらがうウクライナ軍を称賛するまでになった。両国による、かつての「盟主」への配慮は薄れる一方だ。
 共同宣言では、米仏ロが共同議長で和平を仲介する欧州安保協力機構(OSCE)ミンスクグループの解散を求めた。紛争が解決に近づく中、ロシアの関与の度合いはさらに低下する可能性がある。 

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