対米批判避ける日欧=揺らぐ「法の支配」―イラン空爆1カ月 2025年07月21日 05時31分

ホワイトハウスで米軍のイラン核施設空爆について演説するトランプ大統領(左から2人目)=6月21日、ワシントン(EPA時事)
ホワイトハウスで米軍のイラン核施設空爆について演説するトランプ大統領(左から2人目)=6月21日、ワシントン(EPA時事)

 イスラエルに加勢する形で米国がイラン核施設を空爆してから22日で1カ月。専門家の間では、米国とイスラエルの攻撃は「国際法違反」との見方が多い。しかし、欧州で米国を批判する国は一部にとどまり、日本も明確な評価を避けている。違法な武力行使が看過されるようになれば、「法の支配」に基づく国際秩序が揺らぐ恐れがある。
 国連憲章は、国家による武力行使を原則として禁止している。例外として認められるのが、武力攻撃が発生した場合に、攻撃された国が反撃を行う個別的自衛権と、攻撃された国と密接な関係にある国が反撃に加わる集団的自衛権だ。
 イスラエルはイランへの攻撃について、「核の脅威」を除くための自衛的措置だったと主張する。しかし、東京女子大の根本和幸教授(国際法)は「自国への武力攻撃が発生していない段階で、予防的に攻撃を行うのは国際法上、正当化されない」と指摘。「イスラエルはイランの核保有について客観的な証拠を示していない」と述べ、一方的な他国への攻撃に該当し国際法違反だと断言した。
 米国は、同盟国イスラエルを守ることが空爆の目的で、「国連憲章にのっとって集団的自衛権を行使した」との立場だ。これに対しても、根本氏は「イスラエルへの武力攻撃が発生していないため、集団的自衛権の要件を満たさない」と説明している。
 西側諸国で米国の空爆を国際法違反だと言い切ったのは、フランスのマクロン大統領ら一部にとどまった。ドイツのメルツ首相や、北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は米国を擁護。石破茂首相は、イスラエルの攻撃を「強く非難する」と明言したが、米国の空爆に関しては「確定的な評価は困難」と語り、態度は一貫していない。
 法政大の田中佐代子教授(国際法)は「厳格な法解釈に基づけば、違法と思われる行為が非難されていない状況は懸念される」と強調。その上で「安全保障環境が厳しさを増す中、同盟国の米国を批判することは難しい」と指摘し、各国が政治的な配慮を優先し、法解釈を示すことを避けていると分析した。 

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根本和幸 東京女子大教授(本人提供)
根本和幸 東京女子大教授(本人提供)
田中佐代子 法政大教授(本人提供)
田中佐代子 法政大教授(本人提供)

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