高濃縮ウラン、どこに=「事前搬出」「埋没」で見方二分―米国のイラン核施設攻撃 2025年06月29日 14時11分

【イスタンブール時事】米国がイランの核施設を攻撃した後、同国が保管していた高濃縮ウランの所在に関する情報が錯綜(さくそう)している。攻撃前に施設外に搬出されていたとする報道が相次ぐものの、トランプ米大統領は「攻撃で地下に埋没した」と主張。核兵器に転用可能な高濃縮ウランの行方は、今後の火種になる恐れがある。
◇「ほぼ無傷」か
国際原子力機関(IAEA)の報告では、イランは5月時点で濃縮度最大60%のウランを推定約408キロ保有。核爆弾9発分に相当する。空爆された中部フォルドゥや中部イスファハンの核施設に貯蔵中だったとされる。
トランプ氏は高濃縮ウランが核施設から事前に持ち出され隠匿された可能性を否定。「(搬出は)非常に難しく危険だ」として、米国の空爆により「全て数百万トンの岩の下に埋もれた」と語った。
一方、米紙ニューヨーク・タイムズはこの主張に反する米側の情報があると報道。英紙フィナンシャル・タイムズも欧州当局者の話として、高濃縮ウランが複数の場所で分散して保管され、攻撃でも「ほぼ無傷」との初期分析があると伝えた。
米CNNテレビによれば、イランの高濃縮ウランの約6割がイスファハンの地下核施設にあったもようだ。だが、米軍は、同施設は地下の非常に深い場所にあるため破壊できないと判断し、フォルドゥの攻撃に使われた地下貫通型爆弾「バンカーバスター」の使用を見送ったという。イスファハンの攻撃には巡航ミサイル「トマホーク」が使われており、地上を中心とする破壊にとどまったとみられる。
◇再攻撃の口実も
ルビオ米国務長官は、ウラン濃縮に使う遠心分離機が多数ある中部ナタンズや、濃縮の前段階であるウラン転換を行うイスファハンの施設を破壊したと指摘。核活動拠点の稼働が困難になったため、仮に高濃縮ウランが残ったとしても、核兵器開発の脅威は低下したとの見方を示している。
これに対し、イランの外務省と原子力庁は今月、「安全な場所で新たなウラン濃縮施設を稼働させる」と表明。事実だとすれば、攻撃を免れた高濃縮ウランを使った核開発が続く可能性もある。トランプ氏はイランに濃縮能力が残れば、再び攻撃すると警告している。
イランにある高濃縮ウランの実態解明には、IAEAなど国際機関の検証が不可欠だ。しかし、イラン国会は25日、IAEAとの協力停止を求める方針を承認。査察や監視の継続は極めて困難になった。IAEAのグロッシ事務局長は、攻撃された核施設の訪問をイランに求めているが、アラグチ外相は27日、「無意味だ」と批判し、対決姿勢を強めている。