イラン、継戦能力に打撃=体制存続を優先 2025年06月24日 18時14分

【イスタンブール時事】イランはイスラエルによる攻撃で防空システムやミサイル拠点が打撃を受け、継戦能力が大きく低下した。イスラエルの圧倒的な軍事力で劣勢を強いられ、核施設を直接空爆した米国との全面衝突リスクも浮上。停戦合意は、弱体化した体制の存続を優先させる苦渋の決断とみられる。
イスラエルはイランの軍要人や核開発を担った科学者らを多数殺害。当初の目的だった核・ミサイル開発施設だけでなく、エネルギーや軍の施設など国家の中枢拠点へ攻撃を拡大させた。ネタニヤフ首相は、イラン国内で「ミサイル発射装置の半分以上を破壊した」と強調した。
さらに、イスラエルはイラン最高指導者ハメネイ師の殺害を含め体制転換を排除しない姿勢も示した。トランプ米大統領も22日に体制転換に初めて言及。「降伏しない」と徹底抗戦を訴えたハメネイ師の包囲網は狭まっていた。
もっとも、イランは停戦を降伏や譲歩とは見なしていない。イラン国営メディアは23日、トランプ氏の発表後、停戦合意は「外国からの侵略への歴史的で勇敢な抵抗」の成果と報道。カタールの米軍基地への報復が成功したとして、「イランの高性能ミサイルに対する敵の脆弱(ぜいじゃく)性が鮮明になった後、停戦が呼び掛けられた」と主張した。外交や国防を統括する最高安全保障委員会も声明で「敵が敗北を受け入れ、攻撃を一方的に停止させた」と宣言した。
イランは攻撃停止の発効時間直前まで数波にわたりミサイルを発射。米・イスラエルへの強硬な対決姿勢は不変だ。仮に軍事的緊張が緩和されたとしても、ウラン濃縮活動継続を巡る米国との交渉が再開するかは不透明。不信感と敵意が深く刻まれたまま、一触即発の状況が続くとみられる。