濃縮ウランの確認急務=地下施設「甚大な被害」―IAEA事務局長 2025年06月23日 20時48分

23日、オーストリア・ウィーンで記者会見する国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長(EPA時事)
23日、オーストリア・ウィーンで記者会見する国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長(EPA時事)

 【ベルリン時事】国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は23日、米国に核施設を攻撃されたイランが保有する高濃縮ウランの保管状況を確認することが急務だと訴えた。米国の攻撃を受けて開かれた緊急会合で述べた。イランが保有するウランはさらに濃縮すれば兵器に転用できるが、13日のイスラエルによる攻撃開始以降、IAEAの査察は行われていない。
 グロッシ氏は、イラン側から13日に「核物質を保護するための特別な措置を講じる」と通告されたと明かした。「特別な措置」で何を行うのか不明だが、濃縮ウランの状況を把握できなくなる恐れがある。IAEAの推定によると、イランは5月時点で濃縮度最大60%のウランを核爆弾9個分に相当する408.6キロ保有していた。
 グロッシ氏はまた、米国の地下貫通型爆弾が投下された中部フォルドゥの地下ウラン濃縮施設の損害について、実態の把握は困難としながらも「振動に敏感な(濃縮用の)遠心分離機の性質を踏まえると、甚大な被害が起きたと想定される」と分析した。
 イランは今後、IAEAの監視業務への協力を完全に停止したり、核拡散防止条約(NPT)を脱退したりする可能性がある。グロッシ氏は、こうした動きが「NPT体制の瓦解(がかい)につながる」と危惧しており、イランと米イスラエルの双方に対して、軍事的な行動の自制と外交交渉の再開を呼び掛けた。 

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