「先進国同士」の対話を=小倉和夫元駐韓大使―日韓国交正常化60年 2025年06月21日 14時54分

インタビューに応じる小倉和夫元駐韓大使=13日、東京都新宿区
インタビューに応じる小倉和夫元駐韓大使=13日、東京都新宿区

 1965年の日韓国交正常化以降、国際情勢の変化に伴い、日韓の協力の在り方も変わってきた。かつてはわずかだった一般国民の交流も、2024年に両国間の往来者数が1200万人を超えるまでになった。1998年の日韓共同宣言に深く関わるなど、両国関係に長年携わってきた小倉和夫元駐韓大使(元国際交流基金理事長)に、日韓の「過去・現在・未来」を聞いた。
 ―60年でどう変わったか。
 昔は反日デモがあると在韓日本大使館に銃弾が撃ち込まれることもあった。それが石、リンゴ、卵になり、物理的な暴力は消えた。タクシーの日本人乗車拒否などもなくなった。外交問題が民間・経済交流に影響することがない関係になってきた。
 所得水準など社会の状況も似てきて、同じような課題を抱えるようになった。人口減少問題のような共通の課題に関して、「先進国の国民同士の対話」がまだまだ乏しい。
 ―人的交流は劇的に増えた。
 食や音楽をはじめ、相互の文化に対する壁がなくなったのは事実だ。ただ、両国の国民を形作っている歴史や伝統への本当の理解は深まっていない。
 ―日韓共同宣言を出した金大中政権の頃が、最も良好な関係だったと言われるが。
 (革新系の)金大中政権は、金鍾泌氏が率いる保守勢力との連立だった。日本で言えば共産党と自民党が連立するようなもの。保守、革新が互いに攻撃できなかった。日本側の小渕政権も自民党だがリベラルな政権だった。
 (現在のように)保革の対立が激しいと対日関係が国内政治に利用されやすくなる。その点が心配だ。
 ―現在の国際情勢で日韓関係への影響が懸念されることは。
 トランプ米政権が在韓米軍縮小などを見返りとして北朝鮮と取引した場合、革新系の李在明政権は同調すると思う。その時、日本がどうするのかが問われる。
 ―先進国となった韓国にどう対応するか。
 日本は「アジアで唯一の先進民主主義国」というアイデンティティーで歩んできたが、他のアジア諸国も民主化し、もはや国際社会で「アジアで唯一」のイメージはあまり通用しなくなった。一方、韓国は民主主義体制で経済的にも先進国というイメージを全力で打ち出せる時期になった。日本がそれを支援するような大人の対応をすれば、日韓関係もうまくいくと思う。 

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