イラン、米参戦回避に望み=核開発放棄迫られる可能性―決裂なら体制転覆リスク 2025年06月20日 16時39分

米国のウィトコフ中東担当特使(左)とイランのアラグチ外相(AFP時事)
米国のウィトコフ中東担当特使(左)とイランのアラグチ外相(AFP時事)

 【イスタンブール時事】トランプ米大統領がイラン攻撃を巡り「2週間」の猶予を示したことで、イランは米軍の参戦回避にわずかな望みをつないだ。ただ、イスラエルの激しい攻撃でかつてない打撃を受ける中、対米交渉で従来の強気の姿勢を貫くのは難しく、核開発の事実上放棄という重大な決断を迫られる可能性が高い。イスラエルが攻撃を緩めるかも不透明だ。
 ロイター通信によると、4月からオマーンの仲介で5回の高官協議を行ったウィトコフ米中東担当特使とイランのアラグチ外相は、今月13日のイスラエルによる対イラン攻撃開始後、数回にわたり電話で会談。アラグチ氏は「イスラエルの攻撃が続く間は協議の席に戻れない」と訴えた上で、米国がイスラエルに攻撃を停止するよう圧力をかければ「核問題で柔軟な立場を示せる」と伝えたという。
 仮に米国とイランの交渉が再開されれば、米国が5月末にイランに伝達した提案が軸になるとみられる。米メディアによれば、米国やアラブ諸国などでつくる共同事業体が管理する新たな濃縮施設で、原発用燃料をイラン国外生産することなどが提案の柱。核兵器に転用可能な高濃縮ウランを製造している中部フォルドゥの核施設は、稼働停止や解体を強いられるとみられる。
 イランは米国案を「過剰な要求」(最高指導者ハメネイ師)として拒否し、あくまで自国内でウラン濃縮を継続する権利を主張してきた。しかし、トランプ氏は濃縮活動の完全停止を強く求め、イスラエルも圧倒的な軍事力で核・ミサイル関連やその他の主要施設への攻撃を強化している。イランには駆け引きに使えるカードが少ないのが実情だ。
 イランが威信を懸けて進めてきた核開発を米国の要求に屈する形で放棄すれば、反米を国是とする政教一致のイスラム革命体制が揺らぐことになりかねない。一方で、交渉が決裂し米軍の参戦を招く事態になれば、ハメネイ師殺害も辞さないイスラエルの軍事的攻勢で「体制転覆」に至る、イランにとって最悪のシナリオも現実味を帯びる。 

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