韓前首相に与党候補交代方針=一本化失敗、李氏さらに有利に―韓国大統領選 2025年05月10日 16時43分

【ソウル時事】韓国大統領選(6月3日投開票)を巡り、保守系与党「国民の力」の予備選を勝利した金文洙前雇用労働相(73)と韓悳洙前首相(75)の保守系一本化交渉が決裂し、同党執行部は10日、金氏の公認を取り消した。11日までの候補者登録期間に韓氏を公認する手続きを終える方針だ。ただ、正式な手続きで選出された候補を執行部主導で強引に交代させる異例の事態で、党内外から「非民主的」と批判が出ている。
与党内では形勢を逆転するため、中道層への支持拡大が期待される韓氏への一本化を求める声が強かった。しかし、一本化で期待された相乗効果が失われただけでなく、与党への失望感が広がるのは必至だ。支持率でリードする革新系最大野党「共に民主党」候補の李在明前代表(60)にさらに有利な情勢となった。
金氏側と韓氏側は9日深夜まで協議を行ったが、溝を埋められなかった。与党トップの権寧世非常対策委員長は記者会見で、調整の失敗を認め、国民と党員に謝罪。金氏について「迅速な一本化を約束しながら、時間を引き延ばした」と批判した。
与党は10日、候補交代の賛否を問う党員投票を実施。過半数の賛成が得られれば11日に全国委員会を開き正式決定する見通しだ。
国会議員や京畿道知事を歴任したベテランの金氏は予備選を経て、3日の党大会で公認候補に選出された。金氏は10日、「候補の資格を不法に剥奪した政治クーデターだ」と執行部に反発。公認取り消しの効力停止を求める仮処分を裁判所に申請した。予備選で金氏に敗れた韓東勲前代表もSNSへの投稿で「これは民主主義ではない」と執行部を非難した。
一方、韓悳洙氏は2022年の尹錫悦前政権発足当初から首相を務めた。予備選には参加せずに無所属で出馬を表明したが、10日に入党した。声明で党員に向けて団結を訴え、「私は傭兵(ようへい)ではなく、この3年間、野党の暴走に対抗して、皆さんと共に闘ってきた同志だ」と呼び掛けた。
次期大統領に誰がふさわしいかに関する8日発表の世論調査「全国指標調査」によると、李氏が支持率43%。韓氏の23%に対し、金氏は12%と引き離されている。