日米同盟深化に尽力=ジョセフ・ナイ氏 2025年05月08日 16時24分

6日死去したジョセフ・ナイ元米国防次官補は、大学と政府を行き来することが多い米国の専門家の中でも、双方で傑出した実績を残し、各界から尊敬を集めた。4月に死去したアーミテージ元国務副長官に続き、「知日派の重鎮」はトランプ政権2期目の日米関係を見届けることなく生涯を終えた。
1994年、ハーバード大教授から民主党のクリントン政権入り。冷戦終結後の日米安保条約の再定義に取り組み、「東アジア戦略報告」で東アジアでの米軍10万人体制維持を提言した。退任後も日米同盟の深化に尽力し、駐日大使候補に取り沙汰されたこともある。
国際政治学者として、軍事力や経済力などに対し理念や文化の魅力を源泉とする「ソフトパワー」を提唱。米国衰退論に反論した。
2019年の時事通信のインタビューでは「日本は人口減少の問題を抱えるが、潜在的なソフトパワーは大いにある」と指摘。他国を脅すのでなく、助けることを追求してきた日本を「非軍事の大国と言える」と高く評価した。一方、1期目のトランプ氏に関しては「同盟関係に重きを置かない初めての大統領だ」と危惧した。
亡くなる直前まで国際政治に関して積極的に発言を続けた。国際開発局(USAID)の事実上の解体や人道支援の停止などを進める2期目のトランプ氏について、米メディアに「ソフトパワーを理解していない」と苦言を呈していた。