独メルツ新政権始動=「繁栄モデル」立て直し―実行力に早くも疑問符 2025年05月07日 21時06分

7日、パリのエリゼ宮でドイツのメルツ首相(左)を歓迎するマクロン仏大統領(EPA時事)
7日、パリのエリゼ宮でドイツのメルツ首相(左)を歓迎するマクロン仏大統領(EPA時事)

 【ベルリン時事】ドイツで6日、保守政党連合キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と中道左派、社会民主党(SPD)の連立政権が発足した。首相に就任したメルツCDU党首は同日、初閣議を開き政権を始動させたが、連邦議会(下院)での首相指名選挙ではメルツ氏選出への造反者が続出。安全保障や経済などで課題が山積する中、新首相が目指す「実行力ある政府」に早くも疑問符がついた。
 メルツ氏は7日、初の外遊先に選んだフランスで、マクロン大統領との共同記者会見に臨み、ウクライナとロシアが停戦合意した場合、「米国関与の下、停戦監視に加わる用意がある」と表明。ウクライナの「安全の保証」に取り組むと強調した。メルツ氏はポーランドも訪問する。
 就任前のインタビューでは「米国が平和と自由を保証し、中国から原材料、ロシアからエネルギーを安く調達して、国内で加工し輸出する。このドイツのモデルが今、全て疑問視されている」と指摘。トランプ米政権と欧州諸国のあつれきが目立ち、ウクライナ情勢を巡ってロシアとの対立が深まる現状を踏まえ、「繁栄モデル」の立て直しに意欲を示した。
 新政権は留任したピストリウス国防相の下、冷戦後に縮小してきた軍備の大幅増強を図る。国防支出は北大西洋条約機構(NATO)目標の国内総生産(GDP)比2%を大きく上回る見通しで、2011年から停止している徴兵制の復活も目指す。
 最大の輸出先である米国の高関税政策は、2年連続でマイナス成長に沈んでいる独経済に追い打ちをかけている。新政権はEUと連携して貿易問題の解消を急ぐとともに、5000億ユーロ(約81兆円)のインフラ基金創設や企業減税で景気回復を目指す。
 難民受け入れ抑制に向けた国境管理の強化や、不法移民対策にも優先的に取り組む。反移民を掲げて支持を広げる極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の勢いをそぐ狙いだ。
 こうした課題への対応には連立与党の結束が不可欠だが、首相指名選挙では1回目の投票で賛成が過半数に届かず、異例の再投票で決着。与党執行部が「党内を掌握できていない」(南ドイツ新聞)ことが露呈し、今後の政権運営に影を落とした。 

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