ガザ停戦、米大統領が左右=対ハマス完全勝利「あり得ず」―バラク・イスラエル元首相インタビュー 2025年04月25日 16時23分

オンラインでインタビューに応じるバラク元イスラエル首相=17日
オンラインでインタビューに応じるバラク元イスラエル首相=17日

 【カイロ時事】イスラエルのエフド・バラク元首相が時事通信のオンラインによるインタビューに応じ、パレスチナ自治区ガザで続くイスラエルの軍事作戦を巡り、トランプ米大統領が今後示す方針が停戦実現を左右するとの見方を示した。ネタニヤフ首相が目標に掲げるイスラム組織ハマスの「壊滅」については「完全勝利など存在しない」と断じ、落としどころを定めず作戦を続ける姿勢を非難した。
 ◇トランプ氏サウジ訪問が鍵
 取材は17日に実施。バラク氏は、トランプ氏が提唱したガザ住民の域外退去を含む「復興計画」の狙いに関し、「イスラエルやサウジアラビア、エジプトに実際的な案を出すよう促すためだ」と指摘し、あえて極端な計画を示したと推察。トランプ氏には停戦をサウジとイスラエルの国交正常化に結び付け、サウジから米国への巨額投資を引き出す思惑があるのではないかと分析した。
 こうした認識の下、トランプ氏が5月に予定するサウジ訪問に際して「(米側から)今までと違う声が聞こえてくるだろう」と述べ、イスラエルへの停戦圧力が強まる可能性があるという認識を示した。
 ◇ネタニヤフ首相は「現実見よ」
 バラク氏は、2023年10月にイスラエルへの奇襲攻撃を仕掛けたハマスの打倒は「(国家の)切実な義務だ」と指摘。一方で、今年3月のガザ攻撃再開について、人質解放優先の立場から「正しい方向なのか不明だ」と正当性を疑問視した。
 将来のガザ統治について、「パレスチナ人に加え、サウジなどアラブ諸国が承認する別の組織に置き換えるしかない」と強調する。パレスチナ自治政府の協力も視野に入れる。
 ネタニヤフ連立政権内で影響力を持つ極右政党はハマス根絶やガザ再入植を志向し、パレスチナ人が関与する戦後統治は議論が進まない。バラク氏は、連立政権がトランプ氏の住民移住構想を支持していることを含め、ネタニヤフ氏は「幻想でなく、現実を見なければならない」と訴えた。
 
 ◇エフド・バラク氏
 エフド・バラク氏 42年、現在のイスラエル中部のキブツ(集団農場)生まれ。労働党出身の中道左派重鎮。99年~01年に首相を務めたほか、外相や国防相を歴任。右派リクードのネタニヤフ首相とは長年ライバル関係にあった。
 政界入り前はイスラエル軍に所属し、70年代のパレスチナ・ゲリラ鎮圧作戦で特殊部隊を率いるなど活躍。「史上最も多くの勲章を受けた兵士」と英雄視され、参謀総長まで上り詰めた。パレスチナ国家樹立を通じた2国家共存を支持する。 

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