対中「防衛線」は西半球=トランプ氏の見る地図 2025年04月24日 14時16分

【ワシントン時事】中南米、デンマーク領グリーンランド、カナダ―。1月の第2次トランプ米政権発足後、高官による主な外遊先だ。国務長官らの最初の派遣先は政権が優先する外交課題を反映するとみられ、トランプ大統領が南北米大陸や周辺海域など「西半球」に、並々ならぬ関心を抱いていることを浮き彫りにしている。
歴代の米政権は1990年代の冷戦終結後、西半球諸国と比較的疎遠だった。中東やアジアなど他地域での関与を深めたからだ。ではなぜ、トランプ氏は今になって「裏庭」へ回帰したのか。
◇悪意の行動阻止
「この島が中国共産党の影響で左右されれば、米国の安全保障が大きく弱体化する」
バンス副大統領は3月末、北極海と北大西洋の間にあるグリーンランド北西部の米宇宙軍基地を訪問。米兵を前に演説し、グリーンランドは米国の安全保障の傘の下に入るべきだと力説した。
また、ルビオ国務長官は2月初め、パナマなど中米・カリブ海の5カ国を歴訪した。国務長官が就任後の最初の訪問先に同地域を選んだのは、1912年以来だ。
トランプ氏は99年に全面返還したパナマ運河の支配権を「取り戻す」と公言。隣国カナダを米国の「51番目の州」と呼ぶ。政権1期目の国家安全保障会議(NSC)でオセアニア・インド太平洋の安保を担当したアレキサンダー・グレイ氏は「領土的な野心ではなく、全ては中国による悪意ある活動を阻止するための布石。大統領はこうした動きに非常に敏感だ」と、政権の方向性を解説する。
◇21世紀のモンロー主義
西半球を重視するトランプ氏の外交を「モンロー主義」の復活と読み解く向きもある。モンロー主義は南北米大陸への欧州の干渉に反対するもので、米国が20世紀前半まで維持した「孤立主義」の代名詞だ。21世紀に入り、西半球で影響力を増す中国を排除する必要性が高まった。
トランプ氏は政権1期目の2019年、宇宙軍を発足させた。その宇宙から北極圏を中心に地球を眺めると、メルカトル図法による米国中心の一般的な地図とは全く違う世界が見えてくる。そこで米国は、カナダとグリーンランドを防衛ラインとして、ウクライナに侵攻したロシアや、中国とにらみ合っているのだ。
そうした外交戦略は適切なのか。政権1期目のNSCで西半球を担当したクレイグ・ディア氏は「方向性は正しいかもしれない。しかし、同盟・友好国をどう喝するスタイルは、味方を逆に中国へ追いやる結果になるのではないか」と疑問を呈した。