国民の生命線守る若者たち=スーダン、3年目の内戦下で人道支援―分断防ぐ「地域食堂」 2025年04月20日 16時24分

スーダンの人道支援団体「緊急対応室(ERR)」メンバーのアフメド・オベイドさん(左)とイスラ・オマルさん=10日、エジプトの首都カイロ
スーダンの人道支援団体「緊急対応室(ERR)」メンバーのアフメド・オベイドさん(左)とイスラ・オマルさん=10日、エジプトの首都カイロ

 【カイロ時事】アフリカ北東部スーダンで、正規軍と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の衝突が3年目に突入した。食料危機は深刻で、医療システムは崩壊寸前。国連の支援も治安悪化でたびたび中断される中、住民の生命線をつなぎ留めてきたのが若者主体の人道支援団体「緊急対応室(ERR)」だ。
 ◇負傷者搬送で拘束
 エジプトの首都カイロで時事通信の取材に応じたのは、ERRメンバーのアフメド・オベイドさん(25)とイスラ・オマルさん(26)。現在はエジプトで、国際NGOなどと連携する渉外業務に就いている。
 ERRは2019年にバシル独裁政権を崩壊に導いた民主化団体が源流とされる。新型コロナ禍の首都ハルツームなどで、地域別の共助グループとして活動を開始。23年の内戦勃発後、各地のグループを束ねる全国組織となった。活動は「地域食堂」と呼ばれる炊き出しを通じた食料支援、医療サービス提供、女性保護、危険地帯からの脱出支援など多岐にわたる。24年にはノーベル平和賞候補に名前が挙がった。
 オベイドさんは、23年5月にハルツームでの活動に参加した。医学部の学生だったことから医療チームに所属。激しい戦闘が続く中、往診で傷病者の治療などに当たった。RSFが「殺人犯」と見なす負傷者を処置し病院に搬送したことを理由に、RSFに拘束され収容施設に入れられたこともある。
 この時は、RSF兵にオベイドさんの父親の知人がいて解放されたが、ERRメンバーが拘束されたり殺害されたりするのは珍しくない。軍とRSFどちらの支配地域でも人道支援に当たるため、双方から目の敵にされる。オベイドさんによれば、3月だけで少なくとも50人のメンバーが殺害された。
 ◇人間の尊厳守る
 ERRは、危険度の高い地域では食料品を配給しているが、可能な限り地域食堂の形にこだわっている。内戦は国民を分断する。オベイドさんは、「分け隔てなく人々が集まり、食事をして語り合う。孤独感を払拭し、人間としての尊厳を守り、スーダン人の結束を強めるためだ」と語った。
 オマルさんは、戦火を逃れ幾度となく国内で避難を余儀なくされた。それでも「支援をやめれば、人々が死んでしまう」と避難先でも活動を継続。「私たちがやらなければ、誰がやるのか」。原動力は、故郷への社会的責任だ。
 スーダンでは3月、正規軍がハルツーム奪還を発表する一方、西部ダルフールの大半を支配下に置くRSFは4月に「平和統一政府」樹立を一方的に宣言。「世界最悪の人道危機」(国連)をもたらした内戦の終息は見えない。それでもオベイドさんは近く母国へ戻り、研修医として経験を積みながらERRの活動を続ける考えだ。 

その他の写真

スーダンの人道支援団体「緊急対応室(ERR)」が運営する地域食堂=2024年12月、首都ハルツーム東部ソバ(ERR提供)
スーダンの人道支援団体「緊急対応室(ERR)」が運営する地域食堂=2024年12月、首都ハルツーム東部ソバ(ERR提供)

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