明確な日米同盟の将来像描く=アーミテージ元米国務副長官 2025年04月15日 14時25分

アーミテージ元米国務副長官=2002年8月、東京都港区
アーミテージ元米国務副長官=2002年8月、東京都港区

 率直に、強い言葉で、米国に深く依存してきた日本に安全保障分野での貢献を迫った。同時に、日米同盟の将来像を誰よりも明確に描いた。2国間関係の卓越した「管理者」として同盟の近代化を主導したリチャード・アーミテージ元米国務副長官はしかし、晩年になって自国の利益のみを追求するトランプ大統領の孤立主義という米国自身の課題に直面した。
 ジョセフ・ナイ元国防次官補らと超党派でまとめた政策提言「アーミテージ・ナイ報告書」は計6回発表され、日米同盟の「青写真」と見なされた。
 2000年の第1次報告書で日本に集団的自衛権の行使容認を求め、第2次安倍政権下で憲法解釈の変更と安保法制成立という形で結実した。12年の第3次報告書では日本に「一流の国家であり続けたいのか」と問い、国際社会での役割拡大を訴えた。
 一連の歯に衣(きぬ)着せぬ発言は、「外圧」とも受け取られた。01年の米同時テロ直後に「ショー・ザ・フラッグ(旗を掲げよ)」と語ったとされるなど、副長官在任中は強い言葉で日本に行動を要求した。
 軍人らしい威圧感があったが、義に厚い人物でもあった。1975年の南ベトナム(当時)のサイゴン(現ホーチミン)陥落では、敵に渡さないために艦船の破壊を命じた上官に背き、南ベトナムの協力者を艦船でフィリピンに退避させた。
 共和党員でありながら、同盟を軽視するトランプ氏には批判的だった。2016年大統領選では民主党候補のクリントン元国務長官に投票。第6次報告書を発表した昨年4月には、トランプ氏の大統領復権に「米国は過去にも孤立主義の誘惑に駆られたことがある。そして第2次世界大戦が起きた」と警鐘を鳴らした。
 さらに、トランプ氏が返り咲けば、北大西洋条約機構(NATO)や韓国、台湾に圧力をかけて同盟・友好関係を阻害すると予言。「ポピュリズムを回避してきた」日本の役割に、多大な期待を寄せていた。
 中国の台頭などで激変する東アジアの安保環境に合わせ、日米同盟を強化するよう唱え続けるとともに、知日派の育成にも心血を注いだ。アーミテージさんに師事した「アメリカン・エンタープライズ政策研究所」のザック・クーパー上級研究員は「彼は巨人。死去が信じられない」と悼んだ。(ワシントン時事)。 

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講演するアーミテージ元米国務副長官=2024年4月、ワシントン
講演するアーミテージ元米国務副長官=2024年4月、ワシントン

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