米政権、最高裁命令も無視=誤送還の移民、帰還させず 2025年04月15日 14時11分

【ワシントン時事】トランプ米政権が保護資格を持つ移民男性を誤ってエルサルバドルに強制送還した問題を巡り、政権側は14日、連邦最高裁の命令に背き、男性の帰還に取り組まず放置する姿勢を示した。エルサルバドル側も身柄を引き渡さないとしており、人道上の問題に発展している。
男性はエルサルバドル出身で、妻と3人の子と米東部メリーランド州で暮らしていたキルマー・アルマンド・アブレゴガルシア氏。国外追放を免除されていたにもかかわらず、行政の手違いで強制送還され、刑務所に収監された。最高裁は先週、同氏の米帰還を「促進」するよう政府に命じ、トランプ大統領も「最高裁の命令に従う」と語っていた。
だがトランプ氏は14日、エルサルバドルのブケレ大統領と会談した際、改めて記者団に対応を問われると、ボンディ司法長官に回答を委任。ボンディ氏は「この男は米国に不法滞在し(ギャング組織)MS13の一員だった」と述べた上で、帰還の可否はエルサルバドル側の判断だと主張した。アブレゴガルシア氏側は、MS13所属の事実を否定している。
この後ブケレ氏は「テロリストを米国に密入国させることはない」と述べ、身柄を引き渡さない考えを示した。米国との関係構築を狙うエルサルバドルは、自国の刑務所に米国から犯罪者を受け入れると約束。見返りに数百万ドル(数億円)の支払いを得ている。
反移民強硬派でトランプ氏の右腕のミラー大統領次席補佐官は、外交は一義的に大統領権限に属し、裁判所が口を挟むことはできないという持論を展開する。行政による司法判断の無視は、米国の三権分立を掘り崩しかねないという深刻な懸念を呼び起こしている。
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