「戦わずして勝つ」優先=シーレーン封鎖へ訓練―中国 2025年04月01日 19時29分

中国の習近平国家主席=3月11日、北京(AFP時事)
中国の習近平国家主席=3月11日、北京(AFP時事)

 【北京時事】中国軍が台湾周辺で行った演習の内容には、シーレーン(海上交通路)封鎖が含まれた。沿岸警備などを担う中国海警局が軍と歩調を合わせ、台湾本島を包囲する形で臨検・拿捕(だほ)の訓練を実施。習近平政権は台湾統一に向けて武力行使を放棄しないと明言するが、「戦わずして勝つ」(軍事専門家)のが最優先だ。
 「台湾は中国の一つの省であり、これは『一つの中国』原則を踏まえて法に基づき台湾をコントロールする実際の行動だ」。海警局東シナ海分局の報道官は1日、この日の活動をこう説明した。
 中国は台湾を実効支配できていないものの、「中国の一部」と見なしている。海警局は「国内での法執行」という名目で、台湾周辺で臨検や拿捕を進める構えだ。
 台湾周辺は中東の原油を日本に運ぶタンカーをはじめ、貨物船が頻繁に往来している。「台湾近海で何か起きれば、航路は大きな迂回(うかい)を余儀なくされ、輸送コストが跳ね上がる」(日本の海運大手)と言われ、日本の物価高に拍車を掛けかねない。台湾侵攻に至らなくとも、中国当局による臨検や拿捕が相次ぐ事態となれば、海運各社は航路変更を迫られそうだ。
 習政権が悲願の台湾統一を実現する上で、最大の障害となるのは米軍の介入だ。対中強硬派が顔をそろえるトランプ米政権下、台湾への武器売却は増えると見込まれるが、トランプ大統領自身の台湾政策は不透明なまま。習政権は極端な軍事活動を控えつつ、米国の出方を探っていく方針とみられる。
 台湾近海では最近、中国人船員が乗り組んだ貨物船が通信用の海底ケーブルを切断したと疑われる事案が繰り返し発生し、故意との見方も出ている。専門家の間では、シーレーン封鎖の可能性と並び、武力行使か見極めにくい「グレーゾーン戦術」の一環とも指摘されている。 

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