イスラエルとハマス、長期展望欠如=和平見通せず―立山良司・防衛大名誉教授インタビュー 2025年03月26日 18時30分

立山良司 防衛大名誉教授
立山良司 防衛大名誉教授

 イスラエルがパレスチナ自治区ガザで本格的な軍事作戦を再開し、1月以来続いていた停戦は事実上崩壊した。立山良司・防衛大名誉教授は、双方の「長期的展望の欠如」から衝突はなし崩し的に続き、永続的な和平実現は見通せないと語った。
 ―イスラエル軍の完全撤退を伴う第2段階の停戦に至らなかった要因は。
 イスラエルにとって恒久停戦や完全撤退はあり得ず、第2段階の停戦に進む考えはなかっただろう。
 第1段階の停戦開始後、ガザには(イスラム組織)ハマス戦闘員が公然と姿を現し、ハマスによる行政サービスも復活した。ネタニヤフ政権は衝撃を受けたはずだ。米提案の延長案をハマスが拒否したので攻撃を再開したという体裁を取っているが、改めてハマス壊滅が最優先事項となり、人質解放の優先度は下がったのではないか。
 ―今後のガザの見通しは。
 イスラエルに長期的な計画はない。ネタニヤフ政権は、トランプ米大統領が示したガザ住民の域外移住を伴う復興構想にしがみついている。
 域外移住はかつて、イスラエルのユダヤ人社会において「極右の非現実的な考え」と見なされていたが、今ではもはや主流だ。政権だけでなく、社会の右傾化が進んでいる。
 もっとも、具体的にどう進めるのかは不明だ。現実的には、ガザを南北に隔てる区域「ネツァリム回廊」や境界周辺などに軍を配備し、何かあればすぐ対応する形を取ることが考えられる。結局、ハマスとの低強度の武力衝突が今後も続くだろう。
 ―ハマスの対イスラエル戦略は。
 武力闘争でイスラエルの支配下にあるパレスチナ全土を解放するというのがハマスの基本的理念だが、行き詰まっているのは明白だ。
 ファタハを主流派組織とするパレスチナ解放機構(PLO)は1993年、武力闘争路線を放棄しイスラエルとオスロ合意を結んだが、合意は既に破綻している。ハマスがファタハのような政治的選択肢を踏襲することはないだろう。
 イスラエル、ハマス双方が長期的展望を持たずに武力に依存していることが、戦闘の泥沼化を引き起こしている。 

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