ロシア、制裁解除に照準=トランプ氏「検討」、G7判断も―警戒強めるウクライナ 2025年03月26日 16時16分

ロシアのプーチン大統領(左)、トランプ米大統領(中央)、ウクライナのゼレンスキー大統領(AFP時事)
ロシアのプーチン大統領(左)、トランプ米大統領(中央)、ウクライナのゼレンスキー大統領(AFP時事)

 ロシアのプーチン政権は、ウクライナとの間で黒海での停戦に同意した。「見返り」獲得に照準を定め、対ロシア制裁の一部解除を履行の条件としている。トランプ米大統領は制裁解除の検討に着手する方針で、ウクライナのゼレンスキー政権は「対ロ包囲網」崩壊への警戒を強めている。ロシアに厳しい態度を取る日本や欧州諸国も、難しい判断を迫られそうだ。
 「五つか六つあったが、全て検討している」。トランプ氏は25日、黒海停戦の合意履行のためロシアが持ち出した「条件」への対応を記者団に問われ、前向きに応じる考えを示唆した。
 米代表団がサウジアラビアの首都リヤドを舞台にロシアとウクライナの代表団を行き来する形で実施した「間接協議」について、3カ国の政府はそれぞれ微妙に異なる表現で成果を発表した。
 黒海での航行の安全を確保し、武力行使を排除する点では一致しているが、ロシアは発表文でそのための条件を明記。合意履行には、ロシア産品の輸出に携わる企業・船舶に対する制裁の解除や、銀行決済網「国際銀行間通信協会(SWIFT)」へのロシア金融機関の復帰が不可欠だと強調した。
 SWIFTからのロシア排除は、2022年2月のウクライナ侵攻後にバイデン前米政権下で発動された制裁の中で、最も厳しい措置の一つだ。日米欧の先進7カ国(G7)や欧州連合(EU)が中心となり、ロシアを海外送金や決済の枠組みから締め出し、戦争遂行のための資金源遮断を図った。
 SWIFTはベルギーに本部を置き、EUの法律や規制に従う。ロシア金融機関の復帰が容認されれば、制裁網にほころびが生じるだけでなく、ロシアの継戦能力が向上するのは確実だ。ウクライナのゼレンスキー大統領は、「制裁は有害ではなくむしろ有益だ」と強気を装ってきたロシアが言動を一変させ、実利確保を急ぎ始めたと指摘した。
 もっとも、金融制裁を解除するには、「米国がG7のパートナーと調整し、合意を取り付ける必要がある」(米専門家)。ディール(取引)をまとめ上げ、実績を獲得することに前のめりなトランプ氏が、G7各国に圧力を強める可能性もある。ウクライナ支援の在り方などに関し、米国と欧州のあつれきは既に表面化しており、黒海停戦を巡っても、日米欧の結束が問われる事態になりそうだ。 

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