珍しい雪の針状結晶=北極上空からの「手紙」 2024年09月20日 06時00分
【みらい船上・時事】北極航海中の海洋地球研究船「みらい」で18日、変わった雪の結晶が見られた。六角形の結晶がよく知られるが、甲板上に落ちてきたのは針状の結晶。「これは珍しい」と乗船している研究者らも写真を撮っていた。
ちらほらと雪が降り始めたのは、海氷下を観測する無人潜水艇の運航実験中。軽く、さらさらした雪だ。鼻先をかすめると、羽毛でなでられたかのようにくすぐったい。甲板に落ちた雪の結晶は、肉眼でも六角形ではなく、針状だと分かる。
乗船する日本海洋事業の吉田一穂・観測技術員は「雲の中の水蒸気が微細なちりなどを芯として氷晶(氷の結晶)となり、さらに周囲の水蒸気を取り込むことで雪の結晶ができる」と説明。「気温と水蒸気量が一定条件を満たすと針状結晶になり、風が弱いと結晶が結合したり壊れたりすることなく降ってくる」と話す。
「雪は天から送られた手紙」。世界で初めて人工雪を作った石川県出身の物理学者、中谷宇吉郎氏が残した言葉のように、雪の結晶を見ると上空の気象状況が推定できるという。
みらいが停泊していた海域は北緯約76度、西経約166度で気温はマイナス3度前後。低い雪雲があった上空の気温がマイナス7度くらいで、ちょうど針状結晶ができる温度だった。