来年7月の後継結論「性急」=ダライ・ラマ90歳節目にならず―中国の介入警戒・チベット亡命政府首相 2024年09月09日 05時50分
【ニューデリー時事】インド北部ダラムサラに拠点を置くチベット亡命政府のペンパ・ツェリン首相が9日までにニューデリーで時事通信の単独インタビューに応じた。チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世(89)が90歳を迎える来年7月までに後継者の選出方法に関し結論を出すのは「性急過ぎる」と述べ、当面は方針を曖昧にしておくことが重要だとの認識を示した。
ダライ・ラマは2011年、自らの死後に生まれ変わりを探す「輪廻(りんね)転生」制度を存続させるかどうかを「90歳ごろになったら他の高僧らと相談し再検討したい」と表明。中国が独自の後継者を擁立する動きを封じるため、存命中に後継者を指名する可能性にも言及してきた。
ツェリン氏は、ダライ・ラマは「まだ健康だ」とした上で「後継者を今決めたら中国は世界中で影響力を行使(して妨害)する」と予測。「中国は予期できない動きには対処できない。全て(の選択肢)が開かれている」と話し、90歳を節目にする必要はないとの考えを明らかにした。
ダライ・ラマを「祖国分裂を図っている」と敵視する中国政府との関係を巡っては、「非暴力的な解決策を採るなら、中国政府指導部と付き合う以外方法はない」と対話に期待を寄せた。
一方で、中国政府によるチベット自治区での同胞弾圧を「言葉や文化、宗教といった全てのアイデンティティーを攻撃している」と厳しく非難。チベット族の子供たちが入れられる「寄宿学校」で、チベットの文献が破棄されたりチベット語の授業が減らされたりしていると指摘し、「ヘビに絞められ窒息するようにゆっくりと死につつある」と文化消滅への危機感をあらわにした。
米国で7月にチベット問題の解決を促す法律が成立したことに関しては「国際社会の理解を得る最初のステップだ」と歓迎。同法は「米国として、チベットが古代から中国の一部との立場を取ったことは一度もない」と中国の主張を否定する文言を含んでおり、ツェリン氏は他の国にも亡命政府の立場への理解を広めていきたいと述べた。
◇ペンパ・ツェリン氏
ペンパ・ツェリン氏 インド南部カルナタカ州のチベット人居住地区生まれ。現地のチベット人学校や南部チェンナイの大学を卒業した。学生時代はチベットの自由を求める運動にも身を投じた。チベット亡命政府議会議員や議長を歴任した後の2021年5月、ダライ・ラマ14世の下で行政をつかさどる亡命政府首相に就いた。