Xサービス利用禁止に=マスク氏、司法と全面対立―ブラジル 2024年08月31日 15時10分
【サンパウロ時事】南米ブラジルで、米実業家イーロン・マスク氏がオーナーを務めるX(旧ツイッター)の利用が禁止されることになった。連邦最高裁判所がXで偽情報などを流した一部利用者のアカウント凍結を命じたが、X側が拒否し続けたため、同裁が30日に「即時のサービス停止」を決定した。双方が「民主主義」を盾に互いに立場を譲らず、全面的な対立劇につながった。
マスク氏は30日にXへの投稿で「言論の自由は民主主義の根幹だ」と改めて強調。今回の決定の背景に「政治目的」があるとも指摘した。決定を受けて31日未明、ブラジルでは通信事業者がXへのアクセスを遮断。Xが利用できなくなった。
決定を下したモラエス判事は、2022年の大統領選の際に拡散された偽情報の捜査の一環で、アカウント凍結を命令。「民主主義を侵害した人々には説明責任が伴う」と訴えてきた。
22年の大統領選では、当時のボルソナロ大統領が「電子投票システムに欠陥がある」と証拠も示さず主張。勝利して発足したルラ新政権は、こうした発言が、選挙結果に不満を募らせていたボルソナロ支持者らが23年1月、政府中枢機関を襲撃した事件のきっかけになったとみている。
ブラジルは今年、統一地方選挙を控えている。司法として偽情報を野放しにするわけにはいかないという事情もあった。
Xが凍結を命じられたアカウントは、ボルソナロ支持者が多数を占めた。X側は「政敵を検閲するための違法な命令」と断じ、凍結を拒否。マスク氏はモラエス氏を「独裁者」と批判し、ルラ大統領を「その言いなりだ」とこき下ろした。
ブラジルでは、XなどSNSを規制する法案の議会審議が停滞している。有力紙グロボはモラエス氏のこれまでの決定の問題点を指摘する一方、法制化されれば、マスク氏らには言論の自由を超えた責務があることが明確になると説明。それまでは「高慢な実業家と、付け焼き刃の裁判所の決定に国がもてあそばれる」と分析した。