中国、南シナ海で威圧再び=比と「合意」後も緊張続く 2024年08月13日 16時30分
【北京時事】中国がフィリピンなどと領有権争いを抱える南シナ海で、再び威圧的行動を活発化させている。8日にはスカボロー礁(中国名・黄岩島)空域を定期パトロール中だった比軍機の進路を、中国軍機がミサイルを回避するための火炎弾「フレア」を使用して妨害。非難の応酬となっている。
スカボロー礁はフィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあるが、2012年に中国が奪取し、実効支配している。報道によると中国軍機は今月8日、フレアを8発発射。比軍が撮影した映像では、比軍機の左前方で白煙を引く閃光(せんこう)を連続して放つ中国軍機が確認できる。
中国軍南部戦区は自軍の対応を「正当かつ合法的だった」と主張。一方の比軍は中国軍の危険行為を強く非難し、マルコス比大統領も11日に「不当で違法、無謀だ」と中国側を糾弾する声明を発表した。中比は同じ南シナ海のアユンギン(中国名・仁愛)礁で船舶同士の小競り合いを繰り返しているが、中国空軍による妨害に比側が抗議声明を出したのは22年のマルコス氏の就任以来初めてだ。
今回の事件は、中比が緊張緩和に向けて対話を重ねていたさなかに起きた。両国は先月、アユンギン礁の比軍拠点への物資補給を巡り、暫定的な「合意」を締結。26日には中比外相がラオスで会談し、関係安定化に向けた意思疎通の維持で合意していた。
比側が実効支配するアユンギン礁を巡っては、6月に中比船舶が衝突し、比側の兵士が親指を切断する重傷を負っている。領土問題における譲歩は中比共に困難だが、情勢が制御不能になり軍事衝突に至るシナリオは避けたいのが双方の本音だ。米比相互防衛条約を盾に南シナ海問題への関与を強める米国に神経をとがらせる習近平政権には、中比2国間での「手打ち」に持ち込みたい思惑があったとみられる。
アユンギン礁の周辺海域では、直近で目立った衝突は伝えられていない。ただ、香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは中国側が今後、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」を、従来の海上から空に変えて繰り返すことで支配権を強化する可能性があるとの専門家の見立てを報じている。