ロシア西部、情勢緊迫=ウクライナ軍、東京面積の半分占領―越境攻撃から1週間 2024年08月13日 14時41分

12日、ロシアとの国境付近の北東部スムイ州を走行するウクライナ軍戦車(AFP時事)
12日、ロシアとの国境付近の北東部スムイ州を走行するウクライナ軍戦車(AFP時事)

 ウクライナ軍がロシアの侵攻に対抗し、同国西部クルスク州に越境攻撃を始めて13日で1週間が過ぎた。ウクライナ軍のシルスキー総司令官は、東京都の面積の半分に当たる「約1000平方キロ」を占領したと発表。ロシアのプーチン大統領の衝撃は大きく、住民退避や領土奪還にあらゆる手段を講じるとみられ、情勢は緊迫の度合いを増している。
 ◇交渉へ態度硬化か
 「国境から距離12キロ、幅40キロの範囲を侵入された」。クルスク州のスミルノフ知事代行は12日、プーチン氏が軍・治安機関幹部を集めた会議にオンラインで出席。28集落を奪われ、住民12人が死亡したと明らかにした。
 州内の対象者約18万人のうち、約12万人が既に避難したとも説明。ロシア国内の大規模な住民退避は、1999年からの第2次チェチェン紛争以来の事態と伝えられる。
 プーチン氏は会議で、6日に始まった越境攻撃の狙いは「将来の交渉で立場を有利にすることだ」と指摘。住民の生命や、クルスク州内の原発の安全などを脅かすウクライナと「一体どんな交渉ができるのか」と非難した。
 ロシアは侵攻を続ける中、和平交渉の用意があると主張してきたが、態度を硬化させる可能性もある。プーチン氏はこれまで越境攻撃を「大規模な挑発」「テロ・破壊活動」と表現。国民の目に「敗北」と映るのを警戒しているかのようだ。
 米政府系メディアは12日、クルスク州内の天然ガス施設が破壊された衛星画像を公開。ウクライナの激戦地に精鋭部隊を送る一方、本土防衛は新兵らに頼るロシア軍の弱点が浮かび上がった。
 ◇第2次大戦後初
 「目的はロシアの情勢不安定化」「参加兵力は数千人」。ウクライナ高官は1週間の節目を前にAFP通信の取材に語った。ゼレンスキー大統領も12日、軍・治安機関幹部と会議を開き、越境攻撃を行っていることを公式に認めた。
 内外で「第2次大戦後にロシア領が占拠されたのは初めて」と強調されるが、このタイミングでの越境攻撃について、米紙ワシントン・ポストは在キーウ(キエフ)外交筋の話として、11月の米大統領選前に「ロシアに反撃できることを世界に示す」ことが狙いと伝えた。苦戦が続けば、ウクライナに妥協を求める声が一層高まるからだ。
 ゼレンスキー氏は12日のビデオ演説で越境攻撃に言及。2000年にロシアの原子力潜水艦「クルスク」が爆発事故で沈没し、1期目就任直後のプーチン氏が批判されたのと同様、クルスク州情勢も政治的打撃を与えるという認識を示した。 

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