撃墜10年、今も関与否定=オランダ大使館周辺に批判広告―ロシア 2024年07月16日 15時08分
ウクライナ東部ドネツク州上空でマレーシア航空機が撃墜され、乗客乗員298人全員が死亡した事件から17日で10年となる。ロシアが2022年からの全面侵攻に先立ち、ウクライナに軍事介入した14年の惨事。犠牲者が多数出たオランダの裁判所は22年11月、親ロシア派支配地域から「ブク」地対空ミサイルが発射されたと認定したが、プーチン政権は関与を否定し続けている。
「オランダはうその国だ」。モスクワ中心部のオランダ大使館前。撃墜事件の節目を控えた今月12日、荷台に広告シートを貼り付けた謎のトラックが駐車された。「MH17」(マレーシア機の便名)と刻まれた墓碑の絵柄と共に、外交団を中傷するオランダ語の文言が並んでいる。
大使館前では10年前、子供の犠牲に心を痛めたモスクワ市民も花を手向けた。時は流れ、ウクライナ侵攻でロシアと北大西洋条約機構(NATO)の対立が決定的となる中、西側諸国を批判する場所と化した。オランダのルッテ前首相がNATO次期事務総長に就任することも影響しているとみられる。
南隣の建物壁面には、泣いてしゃがみ込む少女の画像を印刷した巨大な屋外広告を掲示。広告主は不明だが、プーチン政権のプロパガンダとみられる。「(ウクライナ東部で)罪のない子供たちが死んでいく8年間、オランダは一体どこにいたのだろうか?」とロシア語で記し、自国の戦争責任を回避しようとしているかのようだ。
広告には「14~22年に1万1000人が死亡した」と書かれており、すべてウクライナ軍の攻撃による死者のような印象操作を図っている。さらに少女の画像はウクライナと無関係で、第2次大戦を扱った映画のワンシーンだとインターネットで指摘されている。
オランダの裁判所は22年11月、連邦保安局(FSB)元大佐で武装勢力司令官だったイゴリ・ギルキン(別名ストレルコフ)被告に本人不在のまま終身刑を言い渡した。ただ、ギルキン被告は全面侵攻に絡んでプーチン政権への批判を強め、拘束されてロシアで収監中。政権は関与を認めず、外国への引き渡しも拒否する立場だ。