フィリピン支配下のアユンギン礁標的=中国、南シナ海で威圧強める―「銃口向けられた」と批判 2024年06月08日 17時07分

アジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)で演説するフィリピンのマルコス大統領=5月31日、シンガポール(AFP時事)
アジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)で演説するフィリピンのマルコス大統領=5月31日、シンガポール(AFP時事)

 【北京時事】南シナ海の領有権を巡る中国とフィリピンの対立が激化している。習近平政権は、米国との防衛協力を深めるフィリピンにいら立ちを強め、同国が実効支配するアユンギン(中国名・仁愛)礁付近で威圧的行動を繰り返している。
 中国国営メディアは2日、アユンギン礁で比軍が拠点とする老朽化した軍艦上で、比軍兵士が中国海警局の船舶に銃口を向けたとする動画を公開した。海警局の提供で、撮影日は5月19日だった。
 シンガポールで5月31日~6月2日に開催されたアジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)では、マルコス比大統領が「フィリピン人を中国海警局が故意に殺害したら、それは戦争行為に近い」とけん制。米軍と連携した武力行使の可能性を示唆し、中国代表団が猛反発していた。
 中国側が動画を2週間遅れで公表した背景には、マルコス氏の批判への反論として、比側の「違法性」を宣伝する狙いがあったとみられる。中国外務省は、「比側が侵害や挑発を繰り返し、緊張を高めている」(報道官)と強調した。
 ただ、比軍は銃口を向けた事実はないと否定している。ブラウナー参謀総長らは、中国のボートが当時、拠点から5~10メートルの距離に迫ったため、「警戒のため兵士らは武装していた」と説明。中国側が比軍の補給物資を奪ったとも非難した。比沿岸警備隊も7日、病人を搬送中のボートが中国側に航行を妨害されたと訴えた。
 報道によると、中国海軍は2、3両日、フィリピンの排他的経済水域(EEZ)内にあるサビナ礁近海でホーバークラフトを使った演習を実施。同礁はアユンギン礁の約60キロ東に位置し、昨年フィリピンが米軍の利用を認めたパラワン州バラバク島からも200キロ以内の距離にある。
 これより先、米比は年次合同軍事演習「バリカタン」の一環として、パラワン州でロケット弾の発射訓練を行っていた。反発する習政権が、今後より比沿岸部に近い海域で威嚇行動に出る可能性もある。 

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南シナ海のアユンギン(中国名・仁愛)礁近海で、フィリピンのボート(中央左と中央右)に接近する中国のボート=5月19日(比軍提供)(AFP時事)
南シナ海のアユンギン(中国名・仁愛)礁近海で、フィリピンのボート(中央左と中央右)に接近する中国のボート=5月19日(比軍提供)(AFP時事)

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