遺族を徹底監視、真相究明遠く=言論統制強化で風化も―天安門事件35年・中国 2024年06月03日 18時47分

中国・北京の天安門広場=3日
中国・北京の天安門広場=3日

 【北京時事】中国・北京で学生らの民主化運動が武力弾圧された1989年6月の天安門事件から、4日で35年。犠牲者遺族は真相究明を訴え続けているが、共産党・政府は事件を「動乱」とする立場を変えておらず、公に語ることはいまだにタブー視される。習近平政権の下で言論統制は一層強まっており、遺族らは監視下での生活を余儀なくされている。
 「身分証を見せろ」。5月下旬、事件で当時19歳の息子を亡くした張先玲さんの自宅前を記者が訪れると、当局者に阻まれた。この時期は24時間態勢で監視しているもようだ。
 それでも呼び鈴を押すと、張さんは笑顔の演技で応じてくれた。当局者に対し「台湾から来た人だから、中国大陸の身分証は持っていない」と説明。記者に向かって「戻ったら先生によろしくね」と徹底して演技を続けた。自宅にいた親族も「もうすぐ『六四』でしょう。だから常に警察がいる」と淡々と語った。
 別の遺族の自宅周辺でも、建物の管理人を名乗る当局者とみられる男が身分証を要求。「もう二度と来るな」と記者に忠告した。
 張さんらが発起人となった犠牲者遺族グループ「天安門の母」は、事件から35年となるのを前に声明を発表。「社会の対立は人の命を奪うことで解決しなければならないのか」「私たちは、この残酷な事実を受け入れることができない」として、政府に「歴史的悲劇」を直視するよう訴え、真相究明や責任者の処罰を求めた。
 歴代政権は事件を「政治風波(騒動)」と呼び、武力弾圧を正当化してきた。習政権もこの見解を維持し、「国家安全」の名の下に遺族や民主派の監視を徹底。統制の結果、事件を知らない若者も多く、真相究明の要求と逆行するように国内では風化が進んでいる。中国外務省の毛寧副報道局長は3日の記者会見で、「80年代末に発生した政治風波に関し、中国政府は既に明確な結論を出している」と従来の説明を繰り返した。 

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