頼新総統演説で波紋=「事実上の独立宣言」批判―台湾 2024年05月21日 18時43分

就任演説を行う台湾の頼清徳新総統=20日、台北(AFP時事)
就任演説を行う台湾の頼清徳新総統=20日、台北(AFP時事)

 【台北時事】台湾の頼清徳新総統が20日の就任演説で行った中台関係に関する発言が波紋を呼んでいる。頼氏は、蔡英文前総統と同様に「現状を維持する」と述べる一方で、中国が掲げる「一つの中国」原則の完全否定とも受け取れる表現を多用。中国が強く反発しているだけでなく、台湾内でも「事実上の独立宣言だ」という見方が出ている。
 頼氏は就任演説で「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」と訴え、台湾と中国の正式名称を用いて双方が対等の関係だと主張した。蔡氏は2016年の就任演説で、中台を「(台湾海峡の)両岸」と呼び、明確に2国間の関係と位置付けることを避けていた。
 また、頼氏は「中華民国の国籍を有する者を、中華民国の国民とする」との台湾の憲法の規定に言及。「中華民国の国籍」を持たない中国の人々を「国民」に含めない立場を示した。憲法は、領土に関して具体的に明記していないが、頼氏が「憲法に反して、中国大陸を排除している」との指摘も出ている。
 頼氏はかつて「台湾独立工作者」を自称。昨年1月の記者会見では「台湾は既に独立国家であり、改めて独立を宣言する必要はない」と語っていた。就任演説でも「既に独立国家」との認識を示した形だ。
 21日付の中国共産党機関紙・人民日報は頼氏の演説について「『台湾独立』のかたくなな立場を露呈した。(頼氏が)両岸の対話や交流を語ったのは全くの詐欺だ」と非難した。台湾でも、中国との関係を重視する最大野党・国民党は「(中台を別々の国と見なす)『二国論』をはっきりと表面化させ、国民の不安を招いた」と批判。主要紙・聯合報は、「頼氏が台湾独立工作者であることを改めて証明した」と論じた。 

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