米、中東情勢に懸念=世界経済に波及リスク―G20 2024年02月28日 14時53分

 【サンパウロ時事】28日開幕の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で、米国はイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘が続く中東情勢の不安定化が、世界経済に及ぼす悪影響を議論したい意向だ。打撃を受けたイスラエルの隣国エジプトやヨルダンには、国際通貨基金(IMF)が支援を続けている。イスラエルを支持し続ける米国に対しては国際的に不満が高まっており、周辺国への経済支援に関与する姿勢を強調することで批判を和らげたい思惑も透ける。
 「世界経済をテロによって弱体化させることはできない」。イエレン米財務長官は27日の記者会見で、G20の優先テーマの一つに中東情勢など地政学リスクの経済への影響を挙げた。高インフレや高水準の債務などに苦しんでいた中東・北アフリカ地域に追い打ちをかけており、IMFは1月、2024年の同地域の成長率予想を2.9%と、昨秋から0.5ポイント引き下げた。
 IMFのアズール中東・中央アジア局長は「下振れリスクは急速に高まっている。観光への悪影響がより深刻化、長期化する恐れがある」と指摘。避難者への支援や治安対策が財政の重荷になると警戒する。
 パレスチナ自治区からの難民が押し寄せるエジプトは、親イラン武装組織フーシ派による攻撃で航路変更する船舶が相次いだことで、スエズ運河からの収入が減少。「包括的な支援パッケージが必要」(IMF報道官)な状態だ。IMFは1月、経済の立て直しを進めていたヨルダンに対する支援継続を発表した。
 現時点で、中東情勢の不安定化は「世界経済に波及していない」(イエレン氏)ものの、海運コストの上昇によるインフレ再燃などが懸念されている。ただ、中東情勢を巡るG20各国・地域のスタンスは隔たりが大きく、どこまで議論が深まるかは見通せない。 

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