中立維持のタイ、ロシア人に人気=「戦争反対」の声も―ウクライナ侵攻2年 2024年02月19日 05時56分

タイ東部パタヤのビーチ近くに置かれたロシア語の旅行代理店の看板=8日
タイ東部パタヤのビーチ近くに置かれたロシア語の旅行代理店の看板=8日

 【バンコク時事】ロシアによるウクライナ侵攻から2年を迎え、日本や欧米が制裁を続ける中、「中立」を保つタイはロシア人に人気で、新型コロナウイルスの感染拡大で急減した観光客らが回復傾向にある。ロシアからタイを訪れた人々は取材に対し、侵攻について明言を避ける人が多かったが、一部では「戦争反対」の声も聞かれた。
 タイの首都バンコクから車で約2時間の東部のリゾート地パタヤは2月上旬、ロシア人を含む観光客でにぎわっていた。ロシア語が表示された薬局や旅行代理店などもあった。
 パタヤや南部のプーケットは以前からロシアの避寒地として人気で、タイの観光・スポーツ省によると2019年には約285万人のロシア人がタイを訪れた。新型コロナの影響で22年は約42万人に減少したが、23年は約148万人にまで回復した。
 背景には、ウクライナ侵攻を巡りタイが中立的な立場を堅持し、ロシアとの直行便を再開したことなどがある。タイのセター首相は23年10月、訪問先の中国でロシアのプーチン大統領と会談し、緊密な関係の維持で合意した。
 タイを訪れるロシア人の中には、観光だけが目的でないケースもある。パタヤの不動産業者は「侵攻後、戦地に行きたくない若者が多く来て長期滞在するようになり、賃貸物件の需要が増えた」と明かした。
 パタヤでは複数のロシア人が取材に応じた。ロシア正教会の教会を家族と訪問していたプログラマーの男性(41)は、2年以上前から滞在する。「侵攻については政治的な話で何も言えないが、できる限りタイにいたい」と話した。ビーチにいたエンジニアの女性(55)は「プーチン大統領を支持する」と述べた。
 自営業の男性(51)は「ロシアとウクライナは『兄弟』だった。全てが解決し、平和になることを望む」と強調。普段はロシア人の妻とロシアで暮らすイラク出身の男性医師(50)は「イラクでも戦争があった。戦争は多くの悲しみを生み出し、どんな目的でも反対だ」と訴えた。 

海外経済ニュース