ウクライナ「孤立すれば崩壊」=戦線維持へ復興支援を―専門家 2024年02月18日 15時46分

英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のオリシア・ルツェビッチ氏=13日、ロンドン
英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のオリシア・ルツェビッチ氏=13日、ロンドン

 【ロンドン時事】ロシアのウクライナ侵攻から間もなく2年となる。戦争終結の兆しが見えない中、ウクライナの復興にどう取り組むべきか。世界有数のシンクタンク、英王立国際問題研究所(チャタムハウス)のオリシア・ルツェビッチ氏に話を聞いた。
 ―ウクライナの被害状況は。
 現代で最大規模の戦争であり、被害は甚大だ。戦場で勝てないロシアは、ウクライナの都市やインフラを破壊して政府を降伏させる戦略を取っている。ウクライナにとって戦線維持のために経済を支えることが最大の課題だが、戦いながら橋や学校を再建し、電力を復旧させることは容易ではない。
 ―停戦を優先すべきだとの声もある。
 プーチン(ロシア大統領)は、ウクライナが新たな領土的現実を受け入れなければならないと主張している。占領地は永遠にロシアのものになるということだ。そのような条件で停戦に至る可能性は低い。ウクライナはミサイルやドローンの攻撃の下で復興に取り組まなければならない。
 ―具体的に何をすべきか。
 最も重要な課題の一つはエネルギー網の再建だ。ロシアが発電所を攻撃の標的とする中、絶えず復旧作業を行い、機能を維持する必要がある。370万人の国内避難民のための住宅建設や、身体・精神に疾患を抱えた人々への医療提供、英国の総面積に匹敵する広大なエリアに埋められた地雷の除去などもある。
 ―戦争の長期化で国際社会に「支援疲れ」はあるか。
 そうは思わない。米国の支援が滞っているのは国内政治のせいだ。欧州連合(EU)はハンガリーの反対に遭いながらも500億ユーロ(約8兆円)の追加支援をまとめた。戦場で役立つのは武器だが、戦争を勝利に導くのは経済だ。もしこれが消耗戦ならば、ウクライナは西側経済に支えられていなければ生き残れない。孤立させれば崩壊する。
 ―日本が果たせる役割は。
 日本は先進7カ国(G7)のメンバーとして柔軟な支援を提供し、ウクライナの生存を支えている。開発援助でのインフラ整備の経験に加え、がれきの処理や耐震建築に関する技術も役立つ。災害でショックを受けた地域社会への対応などのノウハウも提供できるだろう。

 

 ◇オリシア・ルツェビッチ氏略歴
 オリシア・ルツェビッチ氏 ウクライナ西部リビウ出身。リビウ国立大で国際関係学、米ミズーリ大で行政学の修士号を取得。専門は東欧社会と民主化運動。欧米メディアへの寄稿も多い。2014年に英王立国際問題研究所(チャタムハウス)ロシア・ユーラシアプログラムの特別研究員となり、現在は同プログラム次長兼ウクライナ・フォーラム代表。48歳。 

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