米商業不動産にリスク=在宅勤務で逆風、地銀苦しく 2024年02月17日 14時25分

入居者募集中の空き店舗=15日、米ニューヨーク
入居者募集中の空き店舗=15日、米ニューヨーク

 【ニューヨーク時事】オフィスや店舗など商業用不動産の市況悪化が米経済のリスク要因に浮上している。新型コロナ禍をきっかけとした在宅勤務普及で、全米のオフィス空室率は高止まり状態が続く。ニューヨーク州に拠点を置く地方銀行が商業用不動産に絡んだ損失を計上したのを機に米地銀株価は低迷。物件所有者による融資返済の不履行が相次げば、沈静化していた信用不安が再燃しかねない。
 不動産サービスCBREによると、全米のオフィス空室率は上昇傾向にあり、年末には2割に迫る見通し。在宅勤務定着に伴い企業がオフィス面積削減を進める中、「市況回復は難しい」(アナリスト)状況だ。
 連邦準備制度理事会(FRB)の調べでは、米地銀の融資残高に占める商業用不動産向けの比率は足元で4割と、大手行よりも3倍高い水準にある。地銀持ち株会社ニューヨーク・コミュニティー・バンコープが先月末、オフィス向け融資焦げ付きなどを受け、2023年10〜12月期決算について予想外の赤字転落を公表した途端、同社株の売りが拡大。他の地銀株も軟調に推移している。
 日本でも、あおぞら銀行が米商業用不動産向け融資の損失に備えた引当金計上で、24年3月期決算が15年ぶりの赤字に陥る見通しなど影響が広がる。
 インフレ抑制と成長実現を両立させる景気の軟着陸期待が台頭する中、23年に相次いだ米地銀破綻でくすぶった信用不安は和らいでいた。ただ、家賃収入の急減を背景に融資返済が滞り、地銀の経営体力が落ちれば、「米経済にじわりと悪影響が及ぶ」(日系証券)リスクもある。 

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