砲撃の記憶、日常に緊張感=対北朝鮮「最前線」の延坪島―韓国 2024年02月11日 14時20分

韓国北西部・延坪島から望む北朝鮮の席島=7日
韓国北西部・延坪島から望む北朝鮮の席島=7日

 韓国西方の黄海に浮かぶ延坪島。韓国が黄海上の軍事境界線とする北方限界線(NLL)のすぐ南に位置する島では、民間人と兵士の計4人が死亡した2010年の北朝鮮による砲撃の記憶が残る。北朝鮮が対韓国政策を転換し、挑発を強める中、ワタリガニ漁が盛んな島の日常には万一の場合に備えた緊張感が感じられた。7日、島を所管する仁川市の劉正福市長の視察に同行し、島を訪れた。
 ◇わずか3キロ
 仁川港から高速船に揺られ約2時間、延坪島に到着した。船の中は軍人の姿が目立つ。保安上の理由から正確な数字は公表されていないものの、2100人ほどの島の人口の多くが軍人とその家族とされる。
 「そこに見えるのが席島です」。延坪島北部の展望台を訪れ、案内役の軍人が指す方向を見ると、島から最も近い北朝鮮の席島が肉眼でも確認できた。距離は3キロほどしかない。
 「最前線」に位置する延坪島には、至る所に軍の施設があり、韓国軍がにらみを利かせている。「ここに住むだけでも愛国だ」。劉市長は強調した。
 韓国軍によると、北朝鮮は1月5〜7日、黄海に向け3日続けて砲撃を行った。砲弾はNLLの北側に着弾し、韓国側への被害は確認されていないが、島民には避難が呼び掛けられた。
 ◇トラウマ抱える島民も
 「(10年のような砲撃戦が)また起きるのではないか」。島民の50代男性は、今年1月にあった北朝鮮の砲撃を振り返った。
 延坪島を管轄する仁川市甕津郡トップの文景福氏によれば、砲声が聞こえると、10年の砲撃を思い出すといったトラウマを抱える島民が多くいる。行政はこうした島民に対する支援を進めているという。
 島内には、10年の砲撃後に地下や山の斜面に造られたシェルターが8カ所ある。約460人を収容できる「1号シェルター」の中に入ると、天井がアーチ状の巨大な空間が広がる。非常時に備え、倉庫には即席のビビンバや缶詰などの非常食が積まれ、医療処置を受けられるベッドも設置されていた。
 普段は島民の活動の場として利用されているというシェルターの中には、太鼓が並んで置かれていた。「(普段から使っていないと)いざというときに使えないから」と島の関係者は話した。 

その他の写真

「1号シェルター」内に設置されているベッド=7日、韓国北西部・延坪島
「1号シェルター」内に設置されているベッド=7日、韓国北西部・延坪島
「1号シェルター」の入り口=7日、韓国北西部・延坪島
「1号シェルター」の入り口=7日、韓国北西部・延坪島

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