「バイデン氏、記憶力に限り」=米検察が異例の指摘、大統領選に打撃 2024年02月09日 15時01分

バイデン米大統領=8日、ワシントン(AFP時事)
バイデン米大統領=8日、ワシントン(AFP時事)

 【ワシントン時事】バイデン米大統領(81)が副大統領当時の機密文書を自宅などに持ち出していた問題で、捜査に当たったハー特別検察官は8日、刑事訴追しないとの結論を出した。ただ、報告書には「バイデン氏の記憶力にはかなり制限があった」と異例の記載があり、11月の大統領選に向けて高齢不安が指摘されるバイデン氏の認知機能や判断能力に深刻な懸念が突き付けられた。
 報告書によると、バイデン氏は検察の聴取に応じた際、「私が副大統領を終えたのはいつだったか」などと発言。長男のボー氏がいつ死去したかも思い出せなかったとされる。仮に裁判にかけられても「陪審員には記憶力の悪い善意の老人と見なされるだろう」とも記し、バイデン氏の責任能力に疑義さえ示した。
 バイデン氏は8日夜、ホワイトハウスで緊急会見し、「息子がいつ亡くなったかを誰かに思い出させてもらう必要はない」と猛反論。「高齢だが、自分が何をしているかは分かっている」と怒りをあらわにした。
 聴取は昨年10月8、9両日に約5時間にわたって行われた。同7日にイスラム組織ハマスがイスラエルを急襲したばかりで、バイデン氏は会見で、記憶の曖昧さについて「国際危機への対処で頭がいっぱいだった」と釈明した。
 その上で「私が最も大統領にふさわしい人物だ」と宣言。機密文書を持ち出した上、返却せず捜査を妨害したとして起訴されたトランプ前大統領との違いを強調した。
 共和党の候補指名レースで独走するトランプ氏との再戦を見据え、バイデン氏は年明けから選挙戦の態勢を強化。だが、演説で他国の首脳を故人と混同するなど、年齢を不安視する声が強まっていた。検察の指摘がこれに拍車を掛け、「壊滅的な政治的逆風になりかねない」(NBCテレビ)と波紋が広がっている。
 報告書によると、バイデン氏は副大統領を退任後、オバマ元大統領に宛てたアフガニスタンへの米軍増派に反対する意見表明のメモを含む、外交・安全保障政策に関する機密文書を自宅のガレージなどに保管。回顧録執筆のため「意図的に文書を保管、(第三者に)開示した」と認定された。バイデン氏は故意に持ち出したのではないと、違法性を否定している。 

海外経済ニュース