トランプ減税に暗雲=決裂でマスク氏も痛手 2025年06月06日 15時09分

【ワシントン、ニューヨーク時事】蜜月関係にあったトランプ米大統領と実業家イーロン・マスク氏の決裂が浮き彫りとなり、トランプ氏が実現を目指す大型減税の雲行きが怪しくなってきた。マスク氏は減税が債務膨張を招くため「忌まわしい」と痛烈に批判。SNSでネガティブキャンペーンを展開し始めたからだ。一方で、トランプ氏との近さがビジネス上の強みだっただけに、「返り血」を浴びるのは必至だ。
「(減税)法案より、わたしを批判した方がましだ」。トランプ氏は5日、ホワイトハウスで記者団に、肝煎りの法案に対するマスク氏の批判に不快感をあらわにした。
法案に対しては、財政規律を重視する与党共和党内からも不満が噴出している。トランプ氏は自ら反対派の説得に乗り出し、わずか1票差で下院通過にこぎ着けた。しかし、上院では一段の歳出削減を求める声が相次ぎ、審議は難航している。
マスク氏は、行政の無駄を省く新組織「政府効率化省(DOGE)」のトップとして政権入りし、行政機能の縮小や職員解雇の旗振り役を担った。財政規律派議員からは「無駄を暴露した。感謝している」と評価されるなど、影響力は無視できない。
もっとも、マスク氏が決裂で失うものは小さくない。昨年の大統領選でトランプ氏の勝利を巨額献金で支えたマスク氏には、最高経営責任者(CEO)を務める電気自動車(EV)大手テスラや宇宙企業スペースXが規制緩和や政府関連の受注に絡んで恩恵を受けられるとの魂胆があった。
市場でも、マスク氏のトランプ氏との近さからテスラ株が一時急騰し、「トランプ相場」の代表格となった。だが、マスク氏の強引な手法への反発から不買運動が起き、株価は一転低迷。トランプ氏との確執が決定的となった5日は急落し、テスラの時価総額は約22兆円も吹き飛び、同社の一日の価値喪失額として過去最大となった。
EVの販売不振に陥ったテスラにとって、マスク氏が今月に南部テキサス州で始めると宣言した自動運転の「ロボタクシー」は反転攻勢の命運を握る。トランプ氏との関係悪化で、当局がテスラへの風当たりを強めれば、復活の道は険しくなる。